08年の毎日放送の番組「関西電力の圧力あった」社員が証言
福島第1原子力発電所で事故が起きるまで、原子力発電所の危険性を警告する報道は十分になされていなかった。そうした中で、小出裕章さんをはじめとする京都大学原子炉実験所の科学者らが出演した2008年のドキュメンタリー番組は異色な存在を放った。しかし、このドキュメンタリー番組の放送終了後、関西電力から放送局に対し、大きな圧力が加えられたという。この出来事を中心に、現在も続く原発とメディアの関係性ついて小出さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
◇テレビに対する電力会社の圧力
ラジオフォーラム(以下R):2008年に毎日放送(大阪市)が放送した『なぜ警告を続けるのか?京大原子炉実験所―異端の研究者たち」に小出さんは出演されました。番組終了後の経緯を教えて頂けますか?
小出:私が知り得たことをお話しますと、その番組は、それまで原子力発電に抵抗してきた、私たち熊取六人組を題材に取り上げて下さったのですが、それが放映された翌日に関西電力がすぐに毎日放送に来て、「とんでもない番組だ。毎日放送は原子力に関して偏向している」と抗議をしたと聞いています。
R:経緯を調査したところ、社内で一度試写をして、番組アドバイザーにも了承をもらって、通常の放送手順を踏んで放送したわけで、番組には原発推進派の方も出られていましたのでバランスもとれていたと思います。小出さんたちを出したこと自体、とにかく気に入らなかったということでしょうか。
小出:もちろん、そうだと私は思います。これまで、日本のマスコミという世界では、原子力の反対派にものを言わせない、ということでずっときたと思います。確かに賛成派の方も出ていたわけですけれども、私たちに焦点を当てる番組はとんでもないというのがマスコミの中の合意だったのだと思います。
R:同様に、広瀬隆さんもテレビから干されていますし、佐高信さんも干されぎみだと思うのですが。
小出:佐高さんが干されるのは当然というか、ああいう人に出られたら、体制側の人は困るでしょうね。
R:原発にずっと反対し続けてきた高木仁三郎さんもテレビで見た記憶がないのですが、どうだったのでしょうか。
小出:私自身はテレビを全く見ないのです。昔、テレビが普及し始めた頃に、評論家の大宅壮一さんが、この道具は一億総白痴化の道具だ、とおっしゃいました。私も実にその通りだと思います。私から見ると本当にテレビの番組はくだらない情報を一方的に垂れ流す形になってしまっていて、見ると不愉快なことばかりですので、もうほとんど何十年も見ていない状況です。
R:この番組の後、関西電力はスポットCMを引き上げたということですが。
小出:はい。そう聞きました。
R:こういうことをするアンフェアな社内体質はどう思われますか。
小出:相変わらず、汚い手を使ってくるのだな、と思いました。電力会社というのは一番、宣伝とか放送に関してはアンフェアな態度をとり続けてきた会社だと思います。