R:どのくらい持っているのですか。

小出:現在、45トンです。長崎の原爆をつくろうとすれば、4000発も出来てしまうというほどのプルトニウムを懐にすでに入れてしまっているのです。

R:自民党の石破さんが「原子炉をもっているだけで潜在的な抑止力になる」とおっしゃっていますよね。

小出:石破さんもそうですし、自民党という政党が日本の原子力をずっと進めてきたわけですが、「平和利用」を標 榜しながらも、最初からプルトニウムを持ちたいというのが、彼らの狙いだったのです。そんなことを世界の国々が許してくれるわけはないので、日本の国は、 使い道のないプルトニウムは持たないという国際公約をさせられました。

R:つまり、無理やりにでもプルサーマルをやらなければいけないということですね。

小出:危険なことは承知だし、やればやるだけ経済的に損をするというのもわかっているわけですが、もうどうしようもなくなって、危険を承知で普通の原子炉で燃やしてしまおう、というところまで追い込まれてしまったのです。

R:イギリス・フランスに頼むということは、このMOX燃料というのは日本の技術では作れないということですか。

小出:もちろん、作れません。先ほど少し触れましたが、原子力発電所から出てくる使用済み燃料の中からプルトニ ウムを取り出す作業のことを、私たちは再処理と呼んでいます。その作業は、原爆材料となるプルトニウムを取り出すためにどうしてもやらざるを得なかったか ら、開発された技術です。

核兵器保有国はもちろん皆、再処理ということをやったのですが、再処理工場の周辺では猛烈な環境汚染をどこの国でも起しています。大変危険な技術 で、日本という国でも今、六ケ所村でやろうとしているのですけれども、日本というこの国の手には負えないということで、なかなか動かすことが出来ないとい うのが現状なのです。そして、取り出したプルトニウムを使ってMOX(混合酸化物)燃料というものを作ろうとしているのですが、その作業も危険なもので、 日本は今その工場を六ヶ所村に作ろうとしていますが、まだ稼働していません。

R:普通の原子炉から出てくる使用済み核燃料棒と、プルサーマルからでてくる使用済み核燃料棒は違うのですか。

小出:違います。一度、プルサーマルということをやって、プルトニウムの燃料を燃やしてしまいますと、私たちが「超ウラン元素」と呼んでいる特別に寿命の長い放射性物質が生まれます。

R:「超ウラン元素」とは、どのようなものなのでしょうか。

小出:ウランを超える物質という意味ですね。ウランというのは自然界にある一番重い元素なのですが、プルトニウムも超ウラン元素ですし、プルトニウムよりもっと重たい、キュリウムとかアメリシウムと呼ばれる原子核が、たくさん使用済み燃料の中にたまってきてしまうのです。

それらは取り扱いが大変厄介ですし、寿命が長いので、再処理をするにしても、ガラス固化をするにしても、今までやってきたような時間の長さでは到底 できないのです。まず、何十年も原子力発電所の中で冷やしておかなければいけないのです。日本でつくろうとしている六ケ所村の再処理工場では、プルサーマ ルの燃料を再処理することすらできませんので、「超ウラン元素」という、どうしていいのか全く分からないものをさらに生み出してしまうということになりま す。
現在、再稼働申請をしている原発には、MOX燃料で動く原子炉が多く含まれている。国際社会から、核兵器開発を疑われないためにもプルトニウムを燃やさな ければいけないこの国の事情が見え隠れする。日本が核兵器を持つわけはないと多くの日本人が思っているかもしれないが、国際社会はそのように見ていないと いうことを、私たちは認識しておかなければならない。

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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