
◇住民の動員がもたらす弊害
「戦闘」とは北朝鮮当局が住民を強制的に動員する際、頻繁に使われる表現であるが、毎年この時期に北朝鮮で行われる「堆肥戦闘」が、住民にとっては文字通りの「戦闘」であることが、取材協力者の証言からよく分かる。
これまで取材で会った多くの脱北者たちから聞いた話でも、農村では牛や犬の糞を堆肥生産に使えるが、都市部ではそうもいかないため、人糞はとても貴重とのことだった。また、個人以外にも、工場や企業所に対し堆肥生産が割り当てられるのだが、責任者が納付先の農村を訪れ、賄賂を渡して「納付済み」にすることがほとんどだという。
北朝鮮当局は年初から住民を動員し、農作業の準備に余念が無い。だが、現実には「堆肥戦闘」が住民の間に不和をもたらし、賄賂による不正腐敗を助長する温床となっている点を指摘せずにはいられない。
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