北朝鮮北部のある地方都市、市場では中国元が朝鮮ウォンと並行して流通している(撮影2013年10月、アジアプレス)
北朝鮮北部のある地方都市、市場では中国元が朝鮮ウォンと並行して流通している(撮影2013年10月、アジアプレス)

 

「張成沢の粛清以前より進められていた党機関と保衛司令部(軍内の情報機関)による検閲も、張成沢事件によって長引いていて、今も続いています。検閲を行う人たちにしてみれば、取り締まるほど(不正や犯罪を見逃す対価をして貰う)賄賂の収入も増えてよいのでしょうが、一般の住民たちにとっては生活が苦しくなるだけです」

このように現地の住民たちは緊張感の中での暮らしを強いられている。特に取材協力者が強調するのは「全てにおいて以前より暮らしが悪くなっている」という点だ。さらに張成沢氏の粛清の余波で、住民たちの間でもお互いを警戒する雰囲気が強まっているという。だが一方で、親しい人々の間ではこんな本音も飛び交っていると取材協力者は明かす。

「今では中国に逃げると皆が言っていますね。『戦争が起きたら、皆が中国に逃げてしまい、国は空っぽになるだろうから、逃げられないよう封鎖してしまおうと統制を強めているんだ』などと、露骨に話す人たちもいます。普段は(統制のため)本音を語る機会などありませんが、こうした言葉に見られるように、当局に対する住民の気持ちは火を見るより明らかです」。
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