◇脱北図った女性に銃撃の情報も
新年早々、朝中国境地帯で北朝鮮当局による統制が強まる中、現地は緊張感に包まれている。中国吉林省に接する北朝鮮北部・両江道の恵山(ヘサン)市では、平壌から派遣された大規模な「検閲団」が大取締りを始めた。国境の河を渡って脱北を図った女性に国境警備隊が発砲したという情報も入ってきている。住民は不安な日々を過ごしている。(ペク・チャンリョン)
「張成沢粛清のためだろうが、『中央党(労働党を指導する平壌の党中央委員会を指す)』から100余人の検閲団がやって来ました。地方の幹部たちに対する検閲もしていますが、基本的には国境を統制するのが目的です。張成沢事件の影響は私たちにも及んでいるんです」。
両江道の朝中国境地帯に住む取材協力者は8日、アジアプレスとの通話でこう伝えた。別の両江道の協力者は、検閲団は中央党の組織指導部が編成したものだと伝えてきている。
先の取材協力者は今回の検閲団の真のねらいは「住民たちの脱北を防ぐことにある」と指摘する。その上で、恵山市内でもとりわけ中国と近く、主要な脱北ルートとなっている「恵新(ヘシン)洞」で起きたある出来事について語ってくれた。
「恵新洞で今年に入ってから、中国に逃げようとした女性2人に向けて、警備中の国境警備隊兵士が発砲する事件がありました。死者は出なかったのですが、1人は捕まりました。もう1人は中国にたどり着き、あらかじめ待たせていた車に乗って逃げたそうです」。
国境の河を渡ろうとする者に向けての発砲は、当然中国側に弾が向かうことになるため、中国軍に誤解を招かぬよう、北朝鮮の国境警備隊は極力発砲を避けてきた。取材協力者が伝える発砲が事実なら、過去のルールを覆すほど、今回の統制が強く推し進められているということなのだろうか。
中国との間に流れる鴨緑江が凍る今の季節は通常、脱北者が増える時期でもある。また、身の危険を感じた張成沢氏の人脈、関係者、親姻戚などが中国に勝手に逃げてしまわないよう、大々的な水際作戦を展開しているものと見られる。そのため、当局は特別に国境に目を光らせているものと思われる。
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