◇「油一さじだけでもくれれば・・・」兵士告白
北朝鮮メディアは新年に入り、金正恩第1書記による人民軍への格別な「配慮」を続けざまに伝えている。7日、労働党の機関紙「労働新聞」は「軍人と 人民がたくさんの魚を食べられるよう心を砕く」金正恩氏が、軍内に建設した大規模な水産物冷凍工場を視察する姿を報じた。12日には軍の後方補給事業を司 る「後方総局」の部隊を訪ね、軍人の待遇を向上させるよう指示する姿が写真入りで紹介された。
だが、金正恩政権になっても、人民軍兵士の多くは慢性的な栄養失調に悩まされているのが実情だ。アジアプレスがここ数年、繰り返し報じてきたよう に、一般兵士ばかりか下級将校までもが痩せこけ、民家を訪ね物乞いする姿も今や珍しくない。故金正日総書記の時代から続く、人民軍の「悪しき伝統」である 栄養失調。北朝鮮内部の取材協力者がもたらした最新の内部映像から、金正恩時代の軍の栄養状態を読み解く。写真は全て、13年6月から8月にかけて撮影さ れたもの。(ペク・チャンリョン)
昨年8月、取材協力者が軍の食糧事情を尋ねるために声をかけた、とある兵士。建設部隊、つまり工兵として平壌で勤務していたという。細い首とだぶだぶの軍服が痛々しい。年齢は30歳、軍隊生活は9年に及ぶという。
徴兵制を敷く北朝鮮の軍隊生活は10年。栄養失調になるのは軍隊生活に慣れない初めの1~2年がほとんどだ。筆者自身も北朝鮮で暮らしてきたが、9年も軍隊生活を行い、部下もいるであろう「ベテラン隊員」が栄養失調に陥っている姿は衝撃的だ。
この兵士は撮影者に対し、
「毎晩、油が一さじだけでもごはんにかけてくれれば、こうは(栄養失調には)ならない」と明かした。軍人とは名ばかり、銃を握ることもなく国家建設事情に駆り出され、連日重労働を強いられる建設部隊の現実だ。
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