安い国定価格の国産品は販売していない。売らずに陳列しているだけだ。ジャンマダンの価格と同じ高い中国製品は、貿易会社が納品しているようだが、売る物 と陳列しているだけの物の両方があるようだ。次に布地を売っている場所へ。「花柄布地 9800」「カーテン生地 1万3400」などとある。布地は中国 製で、メートル単位で販売しているとのことだ。数人の女性が商品を見ている。
エスカレーターに乗って最上階の五階に上がる。閑散としている。チェロやギターなどを陳列した楽器売場。そして鳥や鹿なとの動物の剥製がたくさん並んでいる。手工芸品のスリッパや籠、かばんを並べている一角でまた意地悪く質問してみた。
ク:販売員さん、あのスリッパひとつ売ってくれませんか。
販売員:販売しているものはありません。
ク:それなら、いつ来たら売ってくれますか?
販売員:いつですって? 物が入って来たら売るでしょう。入って来ないから販売できませんよ。展覧会の時に、わずか10個ずつぐらい入って来たけれど、それはすべて陳列台に並べるものですから、販売するものなんてありますか。
なるほど、金正日が視察した商品展覧会の時に入ってきた物を、そのまま飾っているわけだ。
5階の人気のない売場には、サッカーボールなどの運動用具や体操服も並んでいる。これも必要な人は、皆ジャンマダンで買うだろう。
(つづく)
※ 取材時のウォンの実勢レートは、100円が約3800ウォン。ちなみに国定の労働者の月給は2~3000ウォン程度である。
※ 当連載は、「シリーズ 北朝鮮の市場経済」 を再構成してアップしております。