内戦下に暮らすシリア市民に向けて、トルコに避難するシリア人がラジオ放送局を開設。国内の市民記者が、戦闘状況や食料供給の情報を毎日伝えてくる。戦闘による停電でテレビを見ることのできない人びとにとっては、乾電池式のラジオが命をつなぐ情報源ともなっている。【トルコ南部ガジアンテップ 1月撮影・玉本英子】
内戦下に暮らすシリア市民に向けて、トルコに避難するシリア人がラジオ放送局を開設。国内の市民記者が、戦闘状況や食料供給の情報を毎日伝えてくる。戦闘による停電でテレビを見ることのできない人びとにとっては、乾電池式のラジオが命をつなぐ情報源ともなっている。【トルコ南部ガジアンテップ 1月撮影・玉本英子】

 

3年目を迎えるシリア内戦。死者は13万を越え、国民の3割近くが家を追われた。対立の構図は政府軍と反政府組織に加え、イスラム勢力やクルド組織も台頭するなど複雑化。北部ではアルカイダ系組織が、強硬なイスラム主義による支配を拡大させつつある。

1月、玉本英子はトルコ南部でシリア難民を取材するとともに、シリア国内に入り、内戦下の人びとの声を記録した。いまも激しい戦闘が続くアレッポ県北部地域からの渾身の現地報告。

内戦が激化したシリアのほとんどの都市では、電力供給がストップしている。テレビを見ることのできない市民にとって、唯一の情報源は乾電池式のラジオだ。
1月1日、シリア国境にほど近い、トルコ南部のガジアンテップ市で、シリア向けアラビア語ラジオFM放送「HAWA SMART(スマートの空気)」が開局した。運営にあたるのはシリア人の市民メディア組織、スマート(シリアメディア行動革命チーム)。電波は国境を越え、シリアの主要都市で聴くことができる。
「南ダマスカスからです。すべての道路は開通していますが、狙撃兵に気をつけてください」。

「こちらは、ダルアーです。検問所で市民1人が政府軍兵士に殺され、数人が失踪しています。理由なく、逮捕される可能性があります」。
朝8時、シリア国内に密かに持ち込まれたインターネット回線を通して、各地から市民記者たちが生放送で報告する。国内にいるスタッフらが、自ら現場へ入り、取材をおこなう。スパイと間違えられたり、戦闘に巻き込まれる危険と隣り合わせの仕事だ。
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