◇「ゆきゆきて神軍」の鬼才が泉南アスベスト被害者に寄り添う
数々の傑作アクションドキュメンタリーを世に送り出した映画監督・原一男さんの新作「命てなんぼなん?泉南アスベスト禍を闘う」の上映が大阪市内の劇場で始まった。(石丸次郎)
大阪南部は100年前から石綿産業が盛んで、最盛期の60年代には200以上の工場があり、2000人以上が働いていた。しかし、ほとんどが零細で 粉塵の排気装置がある工場は少なかった。アスベスト粉塵を大量に吸い込むと、20~40年の潜在期間を経て中皮腫や肺がんなどを引き起こす。
そのため「静かな時限爆弾」と呼ばれている。アスベストの危険性を知りながら規制を怠ったとして、2006年、被害者たちは国 を訴えた。
6年前から泉南のアスベスト被害者に密着してきた原監督は語る。
「今の世の中、弱者がどんどん生産されている。そしてどんどん切り捨てられている。水俣、沖縄の辺野古、福島、そして大阪泉南のアスベスト被害者も。『棄民』を生み出す時代と社会への問題提起。ぜひ多くの人に見て欲しい」
上映は大阪市西区のシネヌーヴォで3月7日まで。22、23日は原監督のトークがある他、24日からは原告や弁護団も登壇する。
◎シネヌーヴォ
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/inochitenanbonan.html
◆石綿=アスベストとは
アスベストは天然に存在する鉱物の一種で、耐熱性、電気絶縁性に優れ、摩擦、酸とアルカリに強く加工しやすい利点がある。その一方で、粉塵を大量に吸い込 むと、20~40年の潜在期間を経て中皮腫 や肺がんなどを引き起こす。そのため、「静かな時限爆弾」と呼ばれている。アスベスト全体の約8割は、ビルや工場などの建材に対して使われており、これら の建物の解体のピークは2020年頃と言われている。
◆泉南アスベスト訴訟とは・・・
戦前からアスベスト紡織産業が盛んだった大阪府南西部・泉南地域の人々が「石綿肺にかかったのは国が規制を怠ったため」として06年に国家賠償請求訴訟を 提起。一審は、「国がアスベストの危険性を認識していた時期に被害を防ぐ規制権限を行使しなかったのは違法」として原告が勝訴したが、二審の大阪高裁では 敗訴。現在最高裁に上告中。第2陣訴訟は一審二審で原告が勝訴したが、今年1月に国が最高裁に上告。