凍土掘らされ不満高まる
(ペク・チャンリョン)
昨年11月末、北朝鮮北部の両江道で光ケーブル埋設のための大規模工事が行われ、強制的に動員された住民たちから強い不満が出ていたことが分かった。北朝鮮内部の取材協力者がアジアプレスとの通話で伝えた。
11月27日、両江道に住む取材協力者は記者にこう明かした。
「最近になってケーブルを埋めるために、土をずっと掘り返しています。土が凍っているため、並大抵のことではありません。恵山(ヘサン)市だけでなく、農村でも埋設工事が進められ、労働者から人民班まで、みな駆り出されて大変です」。
人民班とは、最末端の行政組織で、戦前の日本の隣組のような組織。30-100世帯ほどで構成する。人民班では各家庭に労働動員を指示するが、主婦が多いのが特徴だ。ケーブル工事への動員について、実態を尋ねるとこんな返事が返ってきた。
「男は昼間、職場から動員され、夕方に家に戻ってくると今度は『人民班の世帯主動員』ということでまた呼び出されました。しかし、土が凍っているの で、掘る係りの隣で、土を溶かす係りが作業するのですが、普通の仕事ではありませんよ。『なんで暖かいときにしないで、真冬に工事させるのか』と住民は不 満で一杯です。『10年前のケーブル工事の時もそうだった』という声も聞かれました」。
両江道に住む別の取材協力者はケーブル工事の目的について、こう語っている。
「以前埋設した光ケーブルが10年を超えたので、新しいものに交換するという声もあります。また固定電話の回線を増やすためだという話もあります。一般回線と軍事用回線の両方の光ケーブルを埋めているらしい」。
北朝鮮で光ケーブルの埋設が始まったのは90年代後半のこと。2002年ごろには、全国津々浦々で光ケーブルによる電話回線網が完成したとされる。光ケーブル通信は盗聴が難しいため、主に軍事通信用に使われているとされる。
韓国気象庁が発表した統計によると、11月末の両江道恵山市の平均気温は零下4度から零下10度ほどだ。積雪も多い。満足な装備も与えられないまま、氷点下の中、強制的に作業させられる住民の苦労は並大抵ではないだろう。
その後、北朝鮮は厳冬期に入った。ケーブル埋設工事が完了したという報告は、まだない。