道端で売られている本の一部。「心の秘密」、「脳血栓問答集(Q&A)」、「歌と踊り教授案」、「経済契約」などの本の表紙が見える。2013年10月北朝鮮北部のとある国境都市、撮影 アジアプレス。
道端で売られている本の一部。「心の秘密」、「脳血栓問答集(Q&A)」、「歌と踊り教授案」、「経済契約」などの本の表紙が見える。2013年10月北朝鮮北部のとある国境都市、撮影 アジアプレス。

 

道端の小さな本屋では、これ以外にも「不純出版物」を取扱っている。例えば韓国や日本など海外の小説や成人小説、また北朝鮮の独裁体制にそぐわない人文書などが該当する。当局の厳しい統制を受ける本のため、買うには販売者と信頼関係が無ければならない。

筆者は北朝鮮で生活していた08年当時、なじみの古本屋でたくさんの本を借りて読んだ。中でも記憶に残っているのは、「ヘルマン・ゲーリング」とい う本だった。ヒトラーの腹心の軍人政治家を扱ったこの本は「100部図書」、つまり北朝鮮の高位幹部向けに限定出版された特別な本であった。

北朝鮮の庶民は情報に飢えているといっても過言ではない。特に「不純出版物」からは国営メディアが報じない多くの知識を入手できるため、興味を持つ 人は多い。また、いくら秘密裏に見る韓流ドラマ、映画が庶民文化を席巻しているとしても、電力供給が不安定で取締りの危険が常にあるため、手軽な本の需要 は常にある。だが残念なことに、手元に500ウォンや1000ウォンがあるならば、本ではなく食べ物を買って腹を満たすしかないのが庶民生活の現状なので ある。

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