リュックを背負っているのは女性が圧倒的に多い。これには訳がある。北朝鮮では全ての男性は義務的に職場に出勤しなければならず、無断欠勤が続くと 処罰を受けるからだ。「労働鍛錬隊」と呼ばれる強制労働キャンプに数か月送られることもある。職場に賄賂を渡すことで出勤を免除してもらえる場合もある が、基本的に男性は、職場で各種「動員」をこなさなければならない。北朝鮮では、職場はもはや社会統制の一手段なのである。

身体ほどもある荷物を抱えた女性。一般的なカーキ色のリュックは今にもはち切れそうだ。2012年11月平安北道新義州(シニジュ)駅、撮影 アジアプレス
身体ほどもある荷物を抱えた女性。一般的なカーキ色のリュックは今にもはち切れそうだ。2012年11月平安北道新義州(シニジュ)駅、撮影 アジアプレス

 

「女性の方が上手くやれる」という別の理由もある。北朝鮮では移動する度に検問や取締りがあるのだが、取り締まる側はほとんど男だ。このため、女性 の方が少ない賄賂で見逃してもらえる事も多いし、北朝鮮の女性は弁が立つためピンチも切り抜け易い。また、男性の場合はとかく移動中に酒やタバコなどで散 財してしまい、少ない利益しか上がらない「担ぎ屋」には向かないのだ。

商売が一般化したことで、北朝鮮住民の暮らしが「安定した」という分析を目にすることが多い。だが、北朝鮮の市場経済は、女性たちの汗と涙の上に発 展したのだ。それは、今なおリュックを背負った女性に支え続けられていることを忘れてはならない。「苦難の行軍」は今も続いている。

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