◆農村地帯にも砲弾が
内戦下のシリアでは、これまでの政府軍と反政府勢力だけでなく、反政府組織どうしの戦いが激しくなっている。
シリア北西部、アインアルアラブ近郊にあるズィヤレット村は、ユーフラテス川のほとりにある。村の対岸には戦火が迫る。ドーン、ドーンと鋭い砲撃音が響き、いくつもの白煙が立ちのぼっていた。
クルド人が多く暮らすこの村は、1年半前、クルド人組織YPG(人民防衛隊)が制圧、政府軍は撤退した。川向こうではイスラム過激派のISIS(イラク・シリア・イスラム国)が実効支配をすすめ、それに対して自由シリア軍が攻勢をかける。
民家の扉をたたくと、不安げな表情をした子どもたちが出てきた。
1週間前、教師が他の町へ避難したため、小学校は閉鎖された。村の子どもたちは家でじっとしているだけだという。
ナディアちゃん(12)は
「先生までいなくなった。これからどうなるの。怖くてたまらない」とうつむいた。
この5日間、爆発音がやまない、と母親のゼリハ・モハメッドさん(37)は話す。すぐ北にはトルコ国境があるが、トルコ軍が警備を固めており、国境線を越 えることはできない。ここではまだ多くが村にとどまっていた。農村は都市部に比べて食料はあるものの、周辺では戦闘が続き、容易には動けない。
「政府軍は去ったのに、こんどは反政府どうしが衝突を始めてしまった。私たちはどうすることもできない」とゼリハさんは顔を曇らせた。各派の争いの狭間で、村人たちは不安な日々を送っていた。
【シリア・アレッポ県ズィヤレット村 玉本英子】
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