R:緊急時についての定義・期間は、勧告の中には何も書かれていないということですか。
小出:そうです。
R:一方で、安倍首相は五輪招致の時に「コントロールできている」と言っていましたが、日本政府としては基本的には緊急時ではないということを国際社会にはアピールしたいようですね。
小出:ようするに嘘をついているわけですね。
R:IAEAなどの国際機関が日本に対して「緊急時ではない」という勧告をする可能性はないのですか。
小出:多分ないと思います。IAEAはもちろんICRPも、私は原子力を推進するための団体だと思っています。彼らが予期しないような形でもうすで に福島の事故が起きてしまっているのですから、そうなると、原子力を推進するためには住民に何がしかの我慢をさせるしかないとIAEA もICRPも思っているはずです。結局彼らは20ミリシーベルトを福島の人たちに押し付けるという役割を果たすだろうと私は思います。
R:2013年11月の会合では、帰還時の被曝線量の測り方を、個人に線量計を配布して測ってもらうという方法に切り替えるとのことです。内閣府に よれば、現行方式よりも被曝線量が7分の1になり、除染費用が下がるということですが、個人として測るとそんなに変わるものなのですか。
小出:多分、そんなに変わることはないと思います。個人の線量を図るということは必要だと私も思います。ただし、それだけで済ますのではなく、いわゆる現場の汚染がどれだけだということをきっちりと知らなくてはいけないと思います。
R:個人と現場の二つを測るということですか。
小出:例えば、私自身は京都大学原子炉実験所で放射線を取り扱う仕事に就いています。そのため個人線量計を常に持っています。それだけではなくて、 京都大学原子炉実験所の放射線管理区域ではこの場所がどれだけの被曝をしてしまう、こっちの場所はどれだけだ、というように、それぞれエリアごとで、被曝 線量を測定するということをやっているわけです。
その結果、放射線量の高いところにはなるべく近づかないようにしようとか、そういうところでどうしても作業する場合には時間を短くしようと考えることができるわけです。
福島の場合も、それぞれの場所がどれだけの被曝線量になっているかということをまずはきっちりと調べてそれを住民たちに知らせるということをやるべきだと思います。
例えば私が考えているのは、電信柱ごとに、この場所は1時間あたり何マイクロシーベルトになっているかということを常に表示することです。そうすることで、住民たちはどの場所が危ないかということを知って、自分で行動を選択できるようになります。
R:自分の住む地域の詳細な線量を知ることができ、かつ、自分自身の個人線量計も持つ。これが望ましいということですね。
小出:そうです。二重にやるべきだと思います。
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