アジアプレスでは、中国に出国してきた二人の北朝鮮貿易商社員から直接話しを聞くことができた。平壌の電力事情から貿易業務の内容までテーマは多岐にわ たった。また張成沢粛清については、平壌では口に出すこともタブーになっていると語った。二回に分けて連載する。（石丸次郎)
北朝鮮の貿易会社員と石丸との対話は次のような形で実現した。一人はアジアプレスの中国人メンバーが彼と同席する場で、スカイプを使った文章をやり取りし たもの。数日前にあらかじめ聞きたい内容を伝えた上、石丸が文字メッセージで質問、それを中国人メンバーが貿易会社員に口頭で伝え、回答を受けて中国人メ ンバーが文字メッセージで送ってきた。いわば「間接チャット」である。彼とは1月後半に二日にわたって延一時間半ほど対話した。もう一人の貿易会社員と は、2月下旬に中国人メンバー同席の上で、国際通話を行った。内容は主に貿易業務についてである。二人は中国遼寧省に滞在中であった。安全上の問題から、 チャット原文とは異なる部分があることをお断りしておく。
◆平壌も電気事情劣悪
石丸 今の平壌の電気事情はどうですか?
貿易商1 (自分の住んでいる)●●地区は一日平均2-3時間しか電気が来ていない。平壌中心の遊園地、イルカ水族館などの新しく作った施設に電気を回しているためだ。平壌市の中心から外れた郊外では一日10時間以上電気をくれる所もある。
石丸 水道はどうですか?
貿易商1 まともに出ない。しょっちゅう断水がある。水道もやはり周辺で工事していると出なくなる。(外で)汲んできて使わなければならない。
石丸 平壌市民ヘの食糧配給はどうですか?
貿易商1 出たり出なかったりだが、輸入米の白米をくれている。中国の米かどうかはわからない。時にはトウモロコシを混ぜて出す時もある。
石丸 平壌の市場での物価について教えて下さい。
貿易商1 白米は5000ウォン以上してる。豚肉は1キロが15000ウォン、100米ドルは78万ウォンだ。
※注 昨年秋に、当局より外貨使用に対する取締り強化の通達があり、米ドルや中国元所有者が朝鮮ウォンに替え急ぐ動きが強まって、外貨の闇両替相場が下落し物価も下がった。
石丸 列車の運行状況はどうですか?
貿易商1 平壌から新義州まで国際列車で来たが、朝10時に出発して午後3時に着いた。
石丸 国際列車だから定時運行なのでは?他の一般列車はどうですか?
貿易商1 国際列車だけは定時運行している。列車事情についてはあまり知らないが、沙里院(サリウォン)－徳川(トクチョン)間の列車は1か月かかることがあった。
石丸 平安南道の徳川まで1か月ですか!そんなに遠くないはずなのに。
貿易商1 電気がないから。もともと5－6時間の距離です。
※注 黄海北道の沙里院から平安南道の徳川までの直線距離は約150キロメートル。
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