◇採算を度外視 「再処理」に固執する日本

R:ところで、アメリカの原子力発電・核発電というものは「ワンスルー方式」でやっていますね。つまり、ウラン燃料を燃やして、それで核のゴミが出ますけれど、それの再処理をしていないということだそうです。この「ワンスルー方式」、もうちょっと説明をしていただけませんか。

小出:はい。普通の原子力発電所というのは、ウランを核分裂させて発生するエネルギーで発電するシステムです。 ただ、ウランを一方的に核分裂させているだけでは、すぐにウラン資源が無くなってしまいます。それならば、原子炉を運転するとプルトニウムという物質が原 子炉の中に溜まってくるので、それを取り出して燃料にしようという計画ができたのです。それは日本では「核燃料サイクル」と呼んでいるものです。そして、 使用済み燃料の中からプルトニウムを取り出す技術が「再処理」です。

しかし、プルトニウムというものは長崎原爆の材料になった物質ですので、そんなものを燃料にしようとすれば、いわゆる核拡散につながる、つまり、原 爆の材料が世界中に出回ってしまうようになります。これは到底容認できないということで、カーター大統領が1970年代末に、「もうプルトニウムを取り出 すことはダメだ」、「原子力の燃料が少ないなら少なくてもいいから、とにかくそのウランを核分裂させるという段階でもうやめる」という判断をしたのです。

そのため米国は、自国内で商業用の再処理は行わないということに決定しましたし、他の国にも再処理はやらせないということで規制をかけようとしてきたのです。

R:再処理を行わない「ワンスルー方式」についてはよく分かりました。一方、プルトニウムを取り出してそれをまた燃料に使う、いわゆる核燃料サイクルですけれども、これはこれでやっぱり非常にコスト、お金がかかるわけですよね.

小出さん:猛烈にかかります。

R:それを日本はやろうとしている。やろうとしてきたわけですけれども......。

小出:そうです。日本ではまだまともに核燃料サイクルなんてものは動いていません。青森県の六ヶ所村に再処理工 場というのを作ろうとしてきました。もともとの計画では、1997年に運転開始するはずだったのですけれども、一向に動かず、17年経った今でもまだ動か ないという、そういう金食い虫なのですね。

それをこれからもし運転しようとするなら、もっともっとお金がかかってしまいます。電気代に一体いくら上乗せすればいいのか分からない、そんなとこ ろまできてしまっているのです。私としては「もう、さっさと核燃料サイクルから撤退すればいい」と思いますけれども、日本でこれまで原子力、あるいは核燃 料サイクルというものをやってきた人達は、「とにかく核開発をしたい」、「プルトニウムを取り出す技術を懐に入れたい」と思ってきたわけですから、採算を 度外視してでも何とかして再処理工場を動かしたいのです。
まあ、そのツケを払わせられるのが私達、電気の消費者ということになります。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

 

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