福島第一原発事故から3年が経過し、関連報道は日増しに減っている。果たして福島の現状は、廃炉作業に向けた見通しはどうなっているのか。廃炉の方法の一つである「石棺化」について、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。
◇廃炉には労働者の多大な被曝がともなう
ラジオフォーラム(以下R): 2013年の終わり頃から、自民党幹部、政権内部で、福島第一原発周辺地域の避難者の帰還政策を改めるという発言が出てくるようになりました。
茂木経済産業大臣は11月に行った会見で、「(元の住居に)戻らないと考えている方、判断に迷っておられる方も多数いる。政府として様々な選択肢を提示し ていくことが重要だ」と述べました。自民党の石破幹事長は札幌市内の討論会で、「『この地域は住めません、その代わりにこのような手当てをします』といつ か誰かが言わねばいけない時期は必ず来る」と。つまり、民主党政権時代は現状を帰還にむけた準備段階としていたわけですが、これを改めるということです。 小出さんはどう思われましたか。
小出:当たり前のことですが、猛烈に汚染されてしまっている地域が既にあるわけで、そういうところに人々が帰れ ないことは事故の直後から分かっていました。なんで、3年も経った今頃になって言い出すのか。これまで3年間、ふるさとを追われた人々の苦労が一体、どれ ほどのものだったのか改めて考えてしまいます。
もっと早く「ここは帰れない」と言って、まるごと生活を補償する、移住をさせる、コミュニティごとどこか別の場所に街をつくるということを本当は日 本の国がやらなければいけなかったのですけれども、今になってしまいました。そういう決断をするのであれば、一刻も早く人々を、きちんと生活ができるよう にするべきだと思います。
R:民主党時代に「将来は帰還させる」という曖昧な態度をとってきましたが、理由はどこにあったと思いますか。
小出:原発がこれほど酷い被害を与えるということを何とか隠したかった、そして、自分たちの責任を取りたくなかったのだろうと思います。
R:周辺住民の帰還政策は、福島第一原発の廃炉の見通しとも大きく関係してくると思いますが、現状、廃炉作業の見通しはどの程度立っているのでしょうか。
小出:見通しは全くありません。まずはできるところからやろうということで、4号機の使用済み燃料プールの底に沈んでいる燃料を取り出している最中なわけです。全体の廃炉作業の中で言うと、比較的楽な作業だと思います。
R:今後、どういう問題が課題になってきますか。
小出:楽な作業といっても、危険がないわけではありませんし、労働者の被曝が積み重なっていってしまうわけです。
また、1号機、2号機、3号機の使用済み燃料プールからも燃料を取り出さなければいけません。さらに、すでに熔け落ちてしまった1号機から3号機の炉心が 未だにどこにあるのかわからないという、そういう状態のままなのです。一体どういう形で廃炉ができるのか、それすらも決まっていません。