◇内モンゴル自治区現地報告
レアアース採掘に伴う著しい環境汚染の現場に趣いた。村人の多くが歯が抜けるなどの健康被害を訴える。因果関係は不明だが、地元政府は環境対策に乗り出している。内モンゴル自治区ダラハイ村から報告する。(アイアジア/宮崎紀秀)
●地元政府は約1000億円の環境対策するが
レアアース湖と住民の健康被害にどれほどの因果関係があるかについては明らかになっていない。しかし、内モンゴル自治区の政府はレアアース湖周辺の 環境が著しく汚染されていることについては、十分に認識しているようだ。私が探し得た資料だけでも、例えば、2004年には廃液に含まれるトリウムなどの 放射性物質による汚染の影響を調べる調査がされており、レアアース湖の周囲の放射線量が包頭市内よりも高いことが報告書にまとめられている。
また、2011年に中国レアアース学会が、国際学会で使用した資料の中にも、レアアース湖の主要な汚染物質として具体的に「放射性元素トリウムと フッ素」と言及されている。ちなみに、フッ素の由来については、日本の鉱床の専門家によれば、レアアース鉱床に共存している蛍石(成分はフッ化カルシウ ム)や、選鉱の際にフッ酸が使われた可能性が考えられるという。
つまり、中国の当局がレアアース湖とその周辺の環境汚染を認識していないわけではない。にもかかわらず、汚染の影響下で生活している住民たちは、汚染物質や健康への影響などについて地元政府などが説明をしてくれたことはないという。
内モンゴル自治区政府は、2011年に、周辺住民の移住や生態系の回復を含む総額60億元(日本円で約1020億円)の環境対策案を出している。ダ ラハイ村の住民たちに対しても、移住のための新たなマンションが離れた場所に建てられていた。しかし、新たな部屋が規定を超える広さであった場合や、マン ションの内装などは自腹を切らなければいけないという。実際に農民たちの移住は進んでいなかった。そのマンションに行ってみた。部屋の窓からも巨大なレア アース湖を望むことができた。6-7キロ離れているというが、住民たちはここが安全だとは決して思っていなかった。