◆米軍優位の不平等な日米安保・地位協定
米軍機墜落事故も起きています。神奈川県内で1952年以来、米軍機の墜落は62件で、その大半が厚木基地で離着陸した飛行機です。住民に死傷者が出た事故は7件で、死者8人、重軽傷者23人(そのうち1人は後に死亡)です。
東京の横田基地や沖縄の嘉手納・普天間両基地周辺の住民が、静かな空を取りもどすために、国(日本政府)を相手どり、米軍機の飛行差し止めと爆音(騒音)被害の損害賠償を求めて裁判を起こしてきたように、厚木基地周辺の住民も裁判に訴えてきました。
第1次訴訟から第3次訴訟まで、横田・嘉手納・普天間のそれぞれの爆音訴訟と同じように、騒音被害への損害賠償は認められたものの、米軍機の飛行差し止めは最高裁まで争っても、「日米安保条約にもとづく米軍機の運行に日本の裁判権は及ばない」として退けられました。
米軍機の飛行に対して日本の主権が及ばない「治外法権」の状態を、政府も裁判所も認めてしまっているのです。
米軍優位の不平等な日米安保・地位協定の構造が、沖縄でも、神奈川でも、東京でも、平穏な生活を願う住民の前に厚い壁となって立ちはだかっているのです。
厚木基地周辺の住民およそ7000人が原告となった第4次訴訟の判決は、今年5月21日に横浜地裁で言い渡されます。米軍機の飛行差し止めに対する裁判所の判断はどうなるでしょうか。
◆戦争の加害者になりたくない
このように米軍機が厚木、三沢、岩国、嘉手納、普天間などの米軍基地を拠点にして、日本全国の空を自由に使って訓練飛行をし、戦争の技量を磨き、現に出撃して他国の人びとを殺傷してきて、またさらなる戦争での空爆に備えています。
沖縄駐留の海兵隊の部隊もやはり戦闘訓練を積み、イラクなどの戦場に出撃してきては、次なる派兵に備えています。横須賀や佐世保の米軍基地からは、空母や巡洋艦などがペルシャ湾などに出撃してきています。
こうした在日米軍基地の使い方を容認し、基地の建設・維持のために巨額の費用を提供しつづける日本は、米国の戦争に加担しているのです。
この現実を批判的にとらえ、「米国の戦争に加担したくない。戦争につながる基地は許せない」という声を、私は厚木基地や横須賀基地などの周辺に住む 人たちから、そして沖縄でも高江のヘリパッド建設や辺野古の新基地建設に反対する人たちから、普天間爆音訴訟の原告の人たちなどから聞きました。
米軍機の騒音や墜落事故、軍用車両による事故、実弾射撃訓練の流れ弾の被弾事件、米兵犯罪、環境汚染など積み重なる基地被害だけが、人びとが基地に反対する理由ではありません。
「戦争に加担したくない。戦争につながる基地は許せない」との思いもまた、基地反対の大きな理由になっています。
そして、その思いを共有しながら、沖縄と神奈川、横田基地のある東京、岩国基地のある山口など、各地で基地に反対する人びとは、相互に抗議行動や集会に参加し合うなど、力を合わせています。
自民党・安倍政権のもと、立憲主義の原則を無視した解釈改憲による集団的自衛権の行使容認、憲法九条の改変、国防軍創設への動きが強まる今日、米軍 機と自衛隊機が血塗られた翼を連ね、米兵と自衛隊員が血塗られた軍靴の歩調をそろえる、悪夢のような時代を到来させないためにも、戦争に加担したくない、 戦争の加害者に成りたくないとの思いを保ちつづけたいです。
【吉田敏浩】
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