◆自民党、育鵬社の教科書を使うよう、竹富町へ「是正」要求
いったん落ち着いた教科書問題を蒸し返したのは政権交代後の自民党だった。竹富町が「違法状態」だというのだ。昨年3月、義家政務官が竹富町教委に乗り込み、育鵬社の教科書を使うよう「是正指導」するという直接的な手段に出た。
昨年10月には下村文科相が県教委に対し、竹富町教委に「是正」要求するよう指示を出す。国の「是正」要求は法令上、地方自治体に対する最も強い措置。そしてついに今年3月14日、竹富町教委へ直接「是正」を要求した。国が市町村に直接要求するのは初めてのことだ。
是正要求の理由は、採択地区内は同一教科書に統一するよう定める教科書無償措置法に違反しているというもの。下村文科相は記者団に「法治国家として違法状態を解消するのは当然のこと」と述べた。
さらに4月10日には教科書無償措置法改正案が成立する。採択地区で答申した教科書を使用するよう義務づけ、竹富町の外堀を埋めたのだ。
ただ、この改正法では採択地区の構成が「市郡」から「市町村」へ変更された。竹富町教委はこれを逆手にとり、八重山採択地区を離脱、町単独での教科 書採択を検討する方針を打ち出した。すかさず下村文科相は竹富町教委の慶田盛教育長を東京に呼びつけ、「違法確認訴訟」を起こすことまでちらつかせた。
しかし長年、二つの法律の矛盾した状態を放置してきたのは文科省のほう。しかも教科書を同一のものにしなければいけないというなら、そもそも、竹富 町だけでなく、石垣市や与那国町も「違法」だと問題にしなければ筋が通らない。「人口4000人の竹富町を見くびり、逆に教委と、支える町民たちの頑張り に追い詰められ、いきり立っている構図。圧力はタカ派議員のメンツでしかない」と高嶋伸欣・琉球大学名誉教授は批判する。
道徳の教科化、検定基準見直し、首長権限を強める教育委員会制度見直し......。教育「再生」の名で国家統制色を強める安倍政権にとって、正論で徹底的に抵抗する竹富町は、喉に刺さったとげのようなもの。
5月21日、沖縄県教委は竹富町教委を八重山採択地区から分離、単独地区にすることを決定した。「違法確認訴訟」でけん制していた下村大臣はその2日後、提訴はしないという方針を示し、実質的な「白旗」をあげた。(了)
【栗原佳子 新聞うずみ火】
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