九州電力川内原発で、運転再開の前提となる安全審査が優先的に進められている。なぜ川内原発なのか。このまますんなり再稼動に向かうのか。京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに川内原発の再稼働推進の背景について聞いた。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん
ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◆川内原発推進の様々な理由

ラジオフォーラム(以下R);まず、この川内原発について基本的なところを教えていただいてよろしいでしょうか。

小出:はい。九州電力という電力会社は原子力発電所を二カ所に持っていて、初めは玄海という所につくりました。 その次につくったのが川内原発で、鹿児島県の今は薩摩川内市という名前になりましたが、川内川という川の河口に建っている原子力発電所です。1号機が84 年、2号機が翌年85年に稼働を始めました。

R:小出さんは、川内原発に行かれたことはありますか?

小出:川内市には何度も行ったことはありますが、原発の敷地の中に入ったことはありません。

R:川内原発は、事故を起こした福島第一原発の原子炉とは違う型だそうですが。

小出:はい、違うものです。東京電力は沸騰水型(BWR)の原子力発電所を使っていたのですが、九州電力は加圧水型(PWR)という型の原子力発電所を使っています。川内原発もその加圧水型の原発です。

R:川内原発が、再稼動に向けた安全審査の最初の優先枠に選ばれた理由には、事故を起こした福島第一原発の型と違うということも含まれるのでしょうか。

小出:いろいろな理由があると思います。川内原発が福島の事故を起こした原子炉とは型が違うということも、規制 委員会としては取扱いがしやすかったのだろうと思います。また、規制委員会が言っているのは、規制委員会の委員と九州電力との間で、基準地震動、そして基 準津波というものの想定が一応合意に達したということで、これならいけるということになったのだと思います。

◆自治体は推進派。市民は......

R:国と電力会社が再稼動を急ぐのはある意味分かるのですが、自治体については、例えば新潟県知事の言い方と福井県知事の言い方が違うように、自治体によって色々と対応の差が出てきているように思います。この鹿児島県の場合はどうでしょうか。

小出:伊藤知事という方がかなり強力に川内原発の再稼働を要請しています。ですから、地元の要請があるということも、恐らく規制委員会としては大きな理由づけにしようと思っているのだと思います。

R:県知事が一生懸命になる最大の理由は、やはりお金ですか。

小出:もちろんお金です。もともと立地をさせられてしまった時も、建てさせてくれるならば「電源三法の交付金が 下りますよ」「固定資産税が下りますよ」「お金が入りますよ」 という事で、原子力発電所を押し付けられてしまったわけです。川内原発の場合、30年も運転していますので、 固定資産税はどんどん減って、電源三法交付金もほとんど減っているわけで、とにかく何とか新しくまたお金が欲しいということに、自治体としては落とし込め られてしまっているのだと思います。

R:そうすると、確か川内原発は3号機の新設を東日本大震災の直前あたりにやっていたと思うのですが、それも再開される可能性があると見ていいのでしょうか。

小出:はい。安倍さんという人が現在首相の座にいて、原発再稼働はもちろん、新規の建設もやる、海外にも原子力発電所を売るとまで言っているわけです。川内原発3号機の新規建設も、やられてしまう可能性はやはりあるだろうと思います。

R:市民の反応はどうなのでしょう。

小出さん:
たぶん、みんな不安だろうと思います。 例えば、福島の事故が起きた後に、関西電力の大飯原子力発電所が 一時期再稼働したことがあったのですが、 その時、大飯の町民にアンケートを取ったところ、「事故が不安だ」とほとんどの方はそう言ったのです。ただ、再稼働に賛成か反対かと問うと、今度は賛成と いう人が半分を超えたということだったのです。
つまり、不安だけどもやっぱりお金のためには動いて欲しいという、 そういう引き裂かれた感情になっているのだと思います。

R:厳しいですね。それについて私たちが外から何か偉そうに言えるのかという問題もありますが......。

小出:そうですね。非常に苦しい状況に地元が既に追い込まれてしまっているわけですから、その苦しさを何か別の形で補償できるような仕組みを作らないと、ますます苦しいところに追い込められていくのだろうと思います。

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