このグループから病死した豚の肉を安く買い、麺の具として客に出していたという店があった。農貿市場から車で1時間ほど離れた小さな町の中である。 主が逮捕された店に人の気配は無かった。看板の文字はかすれ、戸は閉ざされていた。近所には、実際のその店の麺を口にしたことのある人たちもいた。住民の 1人は「商売するなら安全なものを売ってくれ」と不快感をにじませた。
その店の並びで数軒離れて1軒の食堂があった。切り盛りしていたのは30代くらいの誠実そうな夫婦だった。摘発された店の話を切り出してみると、この夫婦も死んだ豚の肉を買わないかという話をかつて持ちかけられたことがあるという。
「(売りに来た人は)豚肉が安いよ、と言って来たけど、隣の店の人が死んだ肉を使っている、と教えてくれたのです。その場で、売りに来た人の名刺は捨てました」
この話を持ちかけた輩が、摘発されたブローカーグループと同じであったかどうかは分からない。だが、こうした話が珍しくないことの方が驚きだった。
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