●死骸は儲かる
私は、さらにブローカーグループが死んだ豚を仕入れていたという土地に向かうことにした。車で高速を飛ばし約2時間。たどり着いた先は素朴な農家の集落という風情だった。時々豚の飼料の宣伝なども目に入る。養豚が盛んな地域らしい。
ここで中規模の養豚場を訪ねた。訛りの強い言葉で話すオーナーの男性は取材に対し警戒心を抱いていない風だった。素朴な人柄のようだ。オーナーは今でも死んだ豚を買い取る業者がいる、と証言した。
「(死んだ豚を買いに来る人は)いますよ。でも、そのような人には会いたくないです。死んだ豚の肉を専門に仕入れる人だから、病気をウチの豚に伝染させられるのが怖い。何人か電話が来たことがありますが、全部断りました」
病気で死んだ豚を売買することは違法だ。しかし、このオーナーがそうしない理由は、遵法意識や消費者に対する責任感というよりも、自分の豚に病気が感染し損害が出ることが心配ということらしい。
「売ったことはないし、そんなことはしたくない。割に合わない」
それでも病気で死んだ豚を違法に売買しようとする者たちがいる。なぜそのようなことをやると思うかと聞くと、男性はこう答えた。
「なぜですかね・・儲けるためでしょう。多分儲かるからだと思います」
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