◆中国製品のとめどない流入に歯止めをかける...
イラン政府は、公共部門で利用する資材、機器類のうち、国産品が存在するものはそれを用い、外国製品を輸入することを禁じる閣議決定を各省庁に通達した。
イランの準国営イスナー通信が10日、イラン商鉱工業協会のモルタザヴィー事務局長の話として伝えたところによると、今後、公共事業をはじめ、政 府・自治体予算で実施されるすべての事業において、必要とされる資材、部品、機器に国産品が存在する場合はそれを用い、外国製品を輸入することを禁じる閣 議決定が行われたという。
ただし、国内製品が品質、価格、量において問題がある場合、あるいは関係機関の責任者からの提案や閣僚による認可がある場合は、輸入が認められるという。
モルタザヴィー事務局長はインタビューの中で、この決定の目的は国内産業の保護にあるとし、次のように述べた。
「現在イラン経済の70パーセント以上は政府部門またはその関連機関によるものであり、もし政府自らがこの決定を実行したならば、経済問題の70パーセントは消えてなくなるだろう」
欧米諸国による対イラン経済制裁が継続されたこの10年、イランは、制裁を省みず同国のエネルギー部門に莫大な投資を行ってきた中国と、経済的、戦 略的パートナーシップを築くとともに、中国製品を全面的に受け入れてきた。その結果は、一部の国内製造業を圧迫するものであり、今回の措置は、こうした現 状にメスを入れるもの。
モルタザヴィー事務局長は中国を名指しして次のように述べる。
「国家プロジェクトの実施においてなぜ中国から鉄パイプや鉄鋼を輸入する必要があるのか。国内需要を自ら満たす能力があるときに、中国から輸入すべきでは ない。国産のCFLランプ(省エネタイプの電球型蛍光灯。イランの巷に溢れている)が大量にありながら、我々は品質の十分でないものを中国から輸入してき た」
イランと中国に急接近を促したものは、欧米諸国によるイラン敵視政策であり、同時に、欧米を敵視し、アジア、アフリカ、南米諸国など第3世界との共闘を求めたアフマディネジャド前大統領の政策でもあった。
ロウハニ政権による今回の国営事業外国製品輸入禁止措置は、はたして前政権による親中国、反欧米政策からの転換を意味するものなのかは定かではな い。だが、前政権時代から続く、安価な中国製品のとめどない流入に歯止めをかけることで、前政権との違いを浮き立たせるねらいはありそうだ。
今回の決定が実行に移される保証はあるのかとの記者の質問に、モルタザヴィー事務局長は次のように答えている。
「現政権は前政権より法を遵守する政権であり、たとえ政府が同意しかねる法であっても実行するだろう」
ちなみに、日本の公共事業では、費用を抑えるために外国資材を用いることが推奨され、そのための安全審査基準も徹底している。イランが今後、公共部 門に安価な中国製品ではなく割高な国産品を活用することになれば、事業ごとの予算は膨らむだろうが、その一方で、公共事業が次々と新たな経済効果を生み出 す相乗効果も期待できるだろう。
ただし、WTO世界貿易機関では、公共事業において外国企業を差別しないことを加盟各国に義務付けている。イランは度重なるアメリカの妨害によって 今もWTO加盟を果たせずにいるが、現政権下で対米関係が改善し、WTO加盟を果たす可能性は少なくない。そうなると、残念ながら今回の外国製品輸入禁止 措置も短命に終わることになるかもしれない。
【大村一朗】