◆課題に直面しながらも支援継続
内戦が続くシリアから隣国イラクへ逃れた避難民は20万人以上におよぶ。だが、経済的理由などから、学校へ通えない児童も少なくない。
避難民の子どもたちに授業を受けさせたい、という願いから、日本の民間団体が今年4月、イラク北部、クルディスタン地域の主要都市アルビルで、シリ ア人小学生を対象にした補習校を開校した。支援を続けてきたのは、IVY(アイビー、事務局長:安達三千代)で、現在、日本人スタッフが現地で活動する。
ガラワナ補習校には、シリア北部地域などから避難してきた児童およそ200人が通い、週3日、シリア人教師の下で、授業を受ける。北部のクルディス タン地域では言語も異なるため、アラビア語で授業をする学校は限られていたが、IVYの活動を受け、地元教育当局が校舎や教科書などを無償で提供すること になった。
6年生のジョワン・ハサン・オマルくん(14)は半年前、戦闘の続くシリア・アレッポ県から家族10人とともに逃れてきた。オマルくんは中学生だっ たが、避難先のアルビルでは、家族の生活が困窮したため、日雇い労働者として働く父の手伝いをし、学校には行っていなかった。補習校が開校されることを聞 き、小学6年生のクラスへ編入した。
IVYイラク事務所の西村梨沙さんによると、オマルくんは「避難してから、ずっと働いて、つらかった。やっと勉強を再開できた。本当にうれしい」と笑顔で話したという。
現在、地元の小学校は夏休み期間に入っているが、補習校ではこれまで学校へ行けなかった児童の遅れを少しでも取り戻すため、授業を継続している。
学校維持には問題も立ちはだかっている。補習校の校区は広範囲にわたっているため、児童は自家用車やタクシーを使って登校する。しかし、避難民の家族の多くは経済的に困窮しているため、交通費が払えないのが現状という。
IVYは、補習校への送迎バスを3台を用意し、各家庭が毎月支払う交通費の一部を負担も始めたが、活動支援金の不足から、その負担ができなくなる可能性が出てきた。
ガラワナ補習校は9月の新年度からは、地元教育当局管轄の公立小学校として運営される予定だ。しかし避難民家庭が送迎バスの支援が受けられなくなると、通学をあきらめる児童が出てくるのではないかと、西村さんは懸念する。
「避難民のなかには3年近くも学校に通えなかった子どももいる。教育はシリアの未来を左右する。勉強が続けられるよう、日本の皆さんに支援をお願いできたら」と西村さんは呼びかけている。 ※NPO法人IVY http://ivyivy.org/act/
【アジアプレスネットワーク編集部】