◆小選挙区制によるゆがんだ選挙結果と議席構成
自民党が政権の座に返り咲き、安倍首相の再登板を可能にした2012年12月の衆議院選挙で、自民党は小選挙区(定数300)で237議席、比例代表(定数180)で57議席、計294議席を得て圧勝しました。
公明党の31議席と合わせて、自民・公明の連立与党が衆議院の総定数480議席の3分の2以上を占めたわけです。
しかし、この選挙結果には大きな問題があります。有権者の投票行動と民意を反映しない小選挙区制の弊害が、くっきりと表れているのです。
各新聞の記事によると、自民党の小選挙区全体の得票率は43パーセントだったにもかか
わらず、獲得した議席は小選挙区の全議席数の79パーセントにも達するという極端に不
公平な結果でした。
その裏には、膨大な死票(落選者に投じられた票)があります。
「今回の小選挙区の総有効投票数は約5962万票。このうち小選挙区で落選した候補に投じられて議席に反映されなかった『死票』は3163万票で、全体の53パーセントに達する」(「日本経済新聞」2012年12月17日)
つまり、当選者に投じられた票よりも落選者に投じられた票のほうが、総数では多かったわけです。
まさに小選挙区制によるゆがんだ選挙結果だといえます。
一方、比例代表での自民党の得票率は27・62パーセントで、獲得議席は比例代表の全議席数の31・67パーセントでした。
その自民党が獲得した57議席は、前回の2009年の衆議院選挙(自民党が敗れて民主党への政権交代が起きた選挙)での獲得議席55から、わずか2議席増えたにすぎません。
「民意を反映する比例代表での議席獲得が伸び悩んだことは、自民党が有権者の積極的支持を得ていないことを物語っている」(「東京新聞」2012年12月17日)
にもかかわらず、自民党は小選挙区制のからくりによって、4割あまりの得票率しかないのに、議席数ではほぼ8割もの大多数を占めるという小選挙区での圧勝ゆえに、政権復帰をはたしたのでした。
◆"まやかしの多数"にあぐらをかく安倍政権
このように、有権者の投票行動と民意を反映しない小選挙区制による自民党・安倍政権の議席多数は、いわば"まやかしの多数"なのです。
だから、各種報道機関の世論調査で、昨年の特定秘密保護法案に関するときも、現在の集団的自衛権行使の問題に関しても、ほとんどの場合、反対意見の ほうが多いのに、安倍政権はごり押しするという状態になっているのも、国会の議席構成が民意を反映していないこととパラレルな関係にあるといえます。
不公平な小選挙区制による"まやかしの多数"にあぐらをかく安倍政権に、有権者の投票によって国政を負託されたという正当性があるとは思えません。
しかし、そんな政権が、事もあろうに、集団的自衛権行使のために憲法を勝手に解釈し、国是である「平和国家」の道を強引に「戦争国家」路線へとねじ曲げようとしています。
このように正当性に欠ける安倍政権という視点から、集団的自衛権行使の問題を捉えてみるのもひとつの方法です。
マスメディアも、もっとこの視点からも批判的な目を向けるべきでしょう。
【吉田敏浩】
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