ハタミ元大統領の発言および、肖像のメディア掲載禁止を支持する保守系ニュースサイトの記事。 ハタミ師の写真は笑顔のものが多く、記事の内容にかかわらず、概して好印象を与える。そんなところが案外彼の肖像を禁じる理由のひとつなのかもしれない
ハタミ元大統領の発言および、肖像のメディア掲載禁止を支持する保守系ニュースサイトの記事。 ハタミ師の写真は笑顔のものが多く、記事の内容にかかわらず、概して好印象を与える。そんなところが案外彼の肖像を禁じる理由のひとつなのかもしれない

◆「違憲だ」と非難も

改革派と知られ、1997年から8年間イランの大統領を務めたハタミ師の肖像と発言をメディアに掲載することを禁じ、また同師の出国をも禁じるよう求めた国会議員らの要請が、イラン国内で波紋を呼んでいる。

イラン国会の保守派議員9名は6日(日)、法務大臣に宛てた公開文書の中で、ハタミ元大統領の発言の掲載禁止、肖像の掲載禁止、および出国禁止の3項目を徹底するよう求めた。

この文書には、「ハタミ元大統領は88年のアメリカ人による破壊(2009年の大統領選挙後の騒乱)の支持者であり首謀者の一人であるが、いまだこの許さ れざる罪を改悛していない。司法は彼の発言禁止、肖像禁止、出国禁止の実施を真剣に追求すべきである」とあり、議員9名の署名で結ばれている。

ハタミ元大統領は、2009年の大統領選挙で改革派候補を支持し、選挙結果に不信を抱いた改革派候補とその支持者らが抗議運動を引き起こすと、一貫して彼らを支持する姿勢を示した。

この一連の抗議運動の中で、改革派の政治家やジャーナリスト、活動家らは弾圧の対象となり、ハタミ師への3つの禁止措置も当時、アフマディネジャード政権 下の国家安全保障最高評議会によって決定されたものだ。以来5年にわたって国営メディアにハタミ師が姿を見せたことはなく、非国営メディアもそれに準じて きた。

ところが、昨年8月に穏健派のロウハニ大統領が政権の座に就くと、改革派系の新聞は足並みを揃えるかのようにハタミ師の姿を紙面に載せ始めた。国営メディ アを除けば、今ではハタミ師のメディア露出は既成事実化しており、あたかも復権を果たしたかのようである。そのことに業を煮やした一部の保守派議員らが、 今回の挙行に及んだものと思われる。

保守系日刊紙ワタネ・エムルーズは社説の中で、国家安全保障最高評議会の決定を軽んじてはならないとし、同評議会の意向を無視してハタミ師を取り上げるメディアには厳正に対処すべきだとしている。

一方、政府系でありながらイスナー通信は、イラン弁護士協会のマンダニープール元会長の話として、「どこの裁判所からも出されていないこれらの禁止措置 は、法に沿ったものではない」とし、「これら3つの禁止措置は社会的権利を奪うものであり、刑事罰そのものであるから、憲法に基づく公正な裁判が行われな ければならない。だが、これまでハタミ師にそのような判決は下されていない」としている。

リベラル派の国会議員であり、メディア調査委員会の委員でもあるアリー・モタッハリー師もまた、9人の国会議員が主張の拠り所としている国家安全保障最高 評議会の決定事項について、「国家安全保障最高評議会は緊急事態の発生時のみ、暫定的な決定を下すことができるが、恒久的な決定事項については司法判断を 必要とするはずだ」と言及し、ハタミ師への禁止措置の有効性そのものを否定した。

ハタミ師は、改革派支持者の市民の間で絶大な人気を誇り、先の大統領選挙ではロウハニ師を勝利に導いた立役者でもある。彼のメディア露出が事実上解禁され ようとしているのは、来年に控えた国会選挙と専門家会議選挙を睨んでのことと思われる。保守派議員がハタミ師の影響力を押さえ込もうとしたのも、同様の理 由からだろう。

しかしながら、メディアでの露出の多さは、必ずしもその人物の人気や選挙結果を左右するわけではない。毎日のように国営メディアでその姿と発言が伝えられた保守派の大物政治家たちは、先の大統領選挙であえなく敗れ去っているのだから。
【大村一朗】

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