政府は昨年暮れ、新エネルギー基本計画というものを発表し、閣議決定した。民主党政権が打ち出した2030年代に原発をゼロにするという目標をあっ さりと撤回し、むしろ原発を活用していこうというものだ。現在の原発再稼動推進の元となるこの新エネルギー基本計画について、京都大学原子炉実験所・助教 の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん
ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◆ いずれも自民党のマッチポンプ

ラジオフォーラム(以下R):新エネルギー基本計画では、「安定供給」、「コスト低減」、「温暖化対策」の3つを掲げて、原発をベース(基礎)電源にしてゆこうという考えです。

小出:まったくマンガのような話ですね。安定供給ですか。原発が全部止まっているせいで電気が足りないと叫んで いるのは自民党なのですね。ではなぜ止まったかといえば、彼らが絶対安全だといってきた原子力発電所が実はそうではなく、巨大な事故を起こしてしまうもの だということが事実として明らかになったからです。それを棚に上げて、電気が足りなくなったら大変だなどと言って、節電要請をしたりしているわけです。安 定供給などというものを目指すのであれば、原発はやはりやってはいけないと思わなければいけないと思います。

「コスト低減」などというものも本当にお話にならないほどのことですね。もともと原子力発電所というのは、電力会社の有価証券報告書を使って計算す ると、一番高い発電方法でした。ですから、原発を造らないにこしたことはなかったわけです。ましてや、原発を推進して巨大な事故まで起こして、本当であれ ば東京電力なんか何回倒産しても足りないほどの被害が出ている。そして、もっときちんと補償しようと思えば、日本の国家が倒産してもあがないきれないとい うほど、酷いことが起きているわけです。コストの問題を言うならば、もう原発なんて話にならないほど失格です。

R:3つ目の「温暖化対策」についてはどうでしょう。

小出:私自身は、地球温暖化の原因が二酸化炭素だということにはかなり疑問を持っていますが、地球温暖化を防ぐ というのであれば、一番良い方法はエネルギー消費を抑えることですので、これから原子力をどんどんやってエネルギーを供給するという考え方そのものを、ま ずは改めなければいけないと思います。

R:新エネルギー基本計画の素案では、原発の新規建設について触れられていません。あえて触れないことで、新増設の可能性を含ませているのではないかというのは私の穿った見方でしょうか。

小出:いえいえ、必ず、そうだろうと思います。今止まっている原子力発電所も安全性を確認して再稼働させるとまずは言っているわけですね。冗談は言わないでくれと思います。

これまで自民党政権が安全性を確認したと言って、日本で58基もの原子力発電所にお墨付きを与えてきました。もちろん、福島第一原子力発電所の1号機・2号機・3号機・4号機もみんな自民党政権がお墨付きを与えた原子炉です。

それが、事実として事故を起こしているわけですから、まずは自分たちのやったことが間違いだったと反省しなければいけません。私自身は福島の事故は犯罪だと思っていますので、罪を犯した人間をまず処罰をしなければいけないと思っています。

それなのに、また「安全性を確認して」というようなことを言う人たちがいるのですね。本当に困った人たちだと思いますし、さらには新設・増設ということも彼らは考えているはずです。その先には原発の輸出ということももちろんあるでしょう。

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