名古屋市地下鉄アスベスト飛散事故で続く混乱2

2013年12月中旬に名古屋市の地下鉄・六番町駅で起きたアスベスト飛散事故は、地下鉄駅という閉鎖空間における、「超」高濃度の 事故だった。遅々として進まない原因究明。さらに怪しげな委託まで持ち上がる。新聞やテレビが伝えない飛散事故の実態を改めて検証する。(井部正之)

名古屋市地下鉄駅でアスベスト飛散事故を起こしたアンサー幹部が理事を務める中部アスベスト診断協会のホームページ。理事が起こした重大事故について一切説明はない
名古屋市地下鉄駅でアスベスト飛散事故を起こしたアンサー幹部が理事を務める中部アスベスト診断協会のホームページ。理事が起こした重大事故について一切説明はない

 

◆不透明な調査委託の話も

市交通局は2013年12月末までは原因究明の方法についてずっと「検討中」としてきたが、年明けになると原因特定のための調査を中立な第三者機関に委託する方針であることを明らかにした。

ところが、この委託をめぐってひと悶着あった。

市交通局と環境局に取材したところ、環境局が原因究明業務の委託先として交通局に推薦したのが「アスベスト診断士」という資格を持つアスベスト除去 業者や分析業者らで構成する日本アスベスト調査診断協会(椿本明仁会長)の下部組織、中部アスベスト診断協会(菅沼忠明代表)だった。

「アスベスト診断士」とは、アスベスト利用を推進してきたJATI協会(旧日本石綿協会)が商標登録したアスベスト調査の資格制度だ。

アスベストの危険性が散々指摘されても、「管理使用」すれば問題ないと主張し続け、無数の被害者を出すことに大きな役割を果たしたJATI協会が今度はアスベスト除去のための調査でカネ儲けすることに対しては、被害者団体から「マッチポンプ」との批判を受けている。

今回の工事にかかわった事業者を調べてみると、現場に名前が掲示されていた下請け業者、アンサーの作業責任者(正確には別の建設会社の取締役だが、 アンサーによれば今回の工事ではアンサーに所属)などに少なくとも2人の同資格保持者がいた。すると、工事ミスをしたアスベスト診断士の関連団体に原因究 明を依頼することになり、中立性が損なわれているのではないか。

1月中旬、名古屋市に確認すると、市交通局はそうした事実を筆者が指摘するまで知らず、市環境局の小松氏にいたっては同協会への委託について「とくに問題はない」と言い放った。
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