◆町は原発関連の収入に依存

7月上旬、筆者は、福井県おおい町を見学するツアーに参加した。呼びかけたのは「大飯原発差止訴訟」原告団。町内を歩くと、人口規模 から見て不釣り合いとも思えるハコモノが町のあちこちに建て並んでいた。リゾートホテル、温泉などの娯楽施設など、いずれも豪華な施設だ。(矢野宏 新聞 うずみ火)

おおい町の財政は原発関連の収入に依存している。猿橋巧町議によると、年間予算は100億円を超えており、同じ人口の他の町と比べると財政規模は2 倍から3倍で、歳入全体の60%近くが原発マネーだという。当然のことながら、財政体質は優良で、国からの地方交付金も受けていない。

1960年代の町は農業と漁業を細々と営むだけだったが、70年代に入って大飯原発の建設が始まると状況が一変したと、猿橋町議は振り返る。

「道路も整備され、『陸の孤島』と言われていた大島半島に全長743メートルの橋も関西電力によって架けられました。児童数51人の小学校が3階建ての校 舎であり、消防署や警察署、図書館など、次々と建てられていきました。しかも、町民の2割は原発関連の仕事についており、何らかの形で関電の恩恵を受けて いるのです」

まさに、おおい町にとって原発は基幹産業であり、基幹財源である。しかも、原発が止まったままでも地元にカネが落ちる仕組みができている。

だが、一方でずさんな事業推進によって、多額の維持・管理費を背負わされていると、猿橋町議は説明する。

「なかでも『こども家族館』は県の施設で町が管理していますが、収入1200万円で支出は8600万円。毎年7500万円の赤字を出しているのです」
そんな施設が町内に建ち並んでいるのである。

原発を受け入れる自治体に支払われる交付金は、事実上は税金だ。電源算法の一つ、「電源開発促進税」は販売する電力量に応じて電力会社に課せられる税金で、1キロワット当たり37・5銭が徴収される。一般家庭で年間1500円になるという。

もちろん、電力会社が自腹をきるわけもなく、「総括原価方式」によって電気料金に上乗せされるのである。(了)
【矢野宏 新聞うずみ火】

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