◇ 未稼働「もんじゅ」の維持費は電気代
R:諸外国は撤退している。日本は、出来る目処も立っていないし、ずーっと出来ていないけれど、「そのうちできるんだ」と言って撤退はしない。実のところ、いつかは出来るのでしょうか?
小出:もちろん、できません。やればやるだけお金がかかりますし、これまでも大小さまざまな事故を起こしてきましたが、これからも大小さまざまな事故が起きてくると思います。
R:これからも1日5500万円ずつ、パクパクと飲み込み続けていくのでしょうかね。
小出:その1日5500万円というお金は、ナトリウムを回す電気代なのです。今、もんじゅは事故を起こしたまま 止まっているのですね。そのもんじゅという原子炉を冷やすために、ナトリウムという物質を回しているのですが、そのナトリウムという物質は、70度を超え るあたりでようやく液体になるのですが、それより低い温度だと固まってしまうのです。固まってしまうと機械が壊れてしまうので、とにかく温めて液体のまま 保っておかなければいけない。それで、ひたすら電気を使ってナトリウムを温めている、その電気代なのです。
実に、ばかげたことをしているわけです。けれども、もしまたそれを動かそうとすると、温めるための電気代どころか、その他またさまざまなポンプを回したりしなければいけないので、もっともっとまたお金がかかってしまうということになります。
R:そうしますと、日本中の原発が止まって電力が大変だと言っている中で、もんじゅは発電施設なのに発電することもなく、ナトリウムを温め続けるために電気を使い続けているということですか。
小出:そうです。もんじゅをすぐに諦めれば、電力需要は少しは緩和されるわけです。
R:結局、勇気ある撤退を決めるためには、政府がそれを決定するしかないのですね。
小出:もちろんです。政府が決定しなければいけないし、関係している学者たちが、まずは自分たちの責任を明らか にして謝罪をし、「この計画は止めます」と本当は言うべきなのです。残念なのは、そのような人が原子力マフィアの中には全くいないことなのです。本当に 困った事態だと思います。
もんじゅだけですでに1兆円を超える額をつぎ込んでいる。更に、青森県六ケ所村の再処理工場ではその何倍もの税金が使われている。核燃料サイクルにつぎ込 んだ額は十兆円を超えているが、稼動の目処すら立っていない状況で、さらにお金をつぎ込もうという方針を安倍政権は示した。福島第一原発事故という、核開 発から撤退する最大の機会は全く生かされていない。