安倍政権が2014年春に決定した新しい「エネルギー基本計画」では、核燃料サイクルを推進することが明示された。しかしながら、その中核を担う高 速増殖炉「もんじゅ」は、トラブル続きで稼働の目処すら立っていない。そこで今回は、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに、このような「もん じゅ」が存在する背景について尋ねた。(ラジオフォーラム)
◇ なぜ日本だけが撤退できないのか
ラジオフォーラム(以下R):「もんじゅ」とはどのような施設ですか。
小出:私自身、原子力というのは化石燃料が枯渇してしまった後の未来のエネルギー源だと信じていました。たぶ ん、皆さんも今でもそう信じていらっしゃるのだろうと思います。でも、本当のことをいうと、地球上のウラン資源というのは大変貧弱で、これまでのような原 子力発電を続けようとすると、ウランがすぐになくなってしまうということが分かっています。
一方で、普通の原子力発電所では燃やすことができないウランもあるのですけれども、もしそれをプルトニウムという物質に変えて利用することが出来るのであれば、原子力が少しは資源として意味があるものになると、原子力を推進する人たちは言い続けてきました。
本来は役に立たないはずのそうしたウランをプルトニウムに変えるための非常に特殊な原子炉が高速増殖炉というものです。世界中の核保有国はなんとか 高速増殖炉を動かそうとしてきたのですけれども、米国・ロシア・イギリス・フランスも含めて、全ての国が出来ないまま計画から撤退してしまいました。
R:日本はどうしたのですか。
小出:日本は「なんとかやるぞ、やるぞ」と言い続けて、もんじゅという原子炉を動かそうとしてきたのですけれども、20年経ってもほとんど動きもしなかったし、豆電球一つ点けることができないという、そういう欠陥装置だったのです。
◇ 「いつか出来るから」と責任を取らない人たち
R:その欠陥装置ですが、維持費として1日5500万円かかるそうです。それでも撤退できない理由は何なのでしょうか。
小出:1967年に出された原子力開発利用長期計画というものの中で、日本の原子力委員会が「高速増殖炉を実用 化する」と言いました。もうすでに50年ほど前のことです。すぐにでも実用化できるかのように言ったのですけれども、やればやるだけ困難が見えてきまし て、結局今になってもできないという状態なのですね。
そして、すでにもんじゅの開発のために1兆円ものお金を捨ててしまったのですが、さきほども述べたように、まだ豆電球一つすら点けていないというも のなのです。ですから、本当であれば、こんなものが「出来る」と言った学者、政治家、あるいはその他の関係者がきちんと責任を取るというところから始めな ければいけないのですけれども、この原子力ムラの人たち、私は最近原子力マフィアと呼んでいますけれども、彼らは決して自分では責任を取らない人たちなの です。
どんなに失敗しても「やがて上手くいく」と言い続けて、自分たちは責任逃れをしていくという組織ですので、ここまできてしまってもなおかつ、「これはダメだ」とは言えないのです。永遠に「やるやる」と言い続けると私は思います。