福島第一原発の放射能汚染水問題解決の切り札として有力視されてきた凍土壁。1550本もの配管を地下30メートルまで打ち込み、冷却材をそこに循 環させることで、1号機から4号機までの4つの建屋を取り囲む、長さ1.5キロメートルもの氷の壁を作り、放射能汚染水の流出を食い止めようという計画 だ。はたしてこの凍土壁の計画はうまくいくのか。京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
◇遅すぎた工事開始
ラジオフォーラム(以下R):この凍土壁建設には、320億円が国の負担、つまり税金から支払われているとのことですが、凍らないなど、早くも色々な問題が生じているようですね。まず凍土壁について少し解説を頂けますか。
小出:凍土壁という技術は、もともとはトンネル工事などで地下水が出てきたときに、部分的な場所を凍らせて工事を先に進めるというために使われてきた技術です。
しかし、今回の場合には1.5キロというものすごい長さに渡って、そして深さも30メートルという所まで全部を凍らせなければいけません。これまでやってきた技術の枠組みをはるかに超えるものです。
恐らく様々な問題が出てくるでしょう。場合によっては完成できない、仮にできたとしても、長期間もたせることはできないと私は思ってきましたし、そう発言してきました。まさに今、その通りのことが起きているのだと思います。
R:放射能汚染水への対策として凍土壁を作るというアイデアが出てきたときは、どう思われましたか。
小出:私自身は2011年5月、つまり事故が起きた2カ月後に、遮水壁と私は呼びましたけれども、地下水との接 触を断つための壁を地下に作らなければいけないと発言をしました。そのとき私がイメージしたのは、鉄とコンクリートで壁を作るというものでした。ただ、そ れを作ろうとすると1000億円のお金がかかってしまう。そして、6月に東京電力の株主総会があったわけです。
R:提案されたのは株主総会直前だったわけですね。
小出:そうです。その株主総会を乗り越えることができないということで、結局は実現しなかったというものです。
以来3年ほどが経って、ようやく凍土壁というものを造るということになり、今年6月の初めから工事が始まっているわけですけれども、私はあまりにも遅すぎたと思います。