◆自衛隊を「赤十字」活動に
泥さんは、ノルウェーが自国に直接関係しない紛争の調停・和平交渉などにも積極的にかかわる「平和外交」を打ち出していることに触れ、「国にはいろいろな 役割分担があります。日本はどういう国際的な役割を果たすべきか、憲法に基づいて考えるべきです。避難民の輸送、避難民キャンプの運営など、人も金も足り ない分野がある。そんな『赤十字国家』になることが日本の国益につながるのではないでしょうか。それなら自衛官を送ることに賛成できます」と語った。
「軍事力だけでは和平は達成できません。政治力、経済力などが必要なのに、安倍総理はすべてを軍事力で解決できると思っているのではないでしょう か。軍事力でできること、できないことのわきまえをつけていただきたい。本当の戦争にならないようにしていくのが政治の役割なのはずです」
集団的自衛権を認めるべきだと主張する人たちは中国の海洋進出を挙げる。万一、尖閣諸島を攻められたらどうするのだ。だから、米軍に守ってもらうのだから自衛隊もアメリカのために血を流すくらいの覚悟が必要だ、と。
泥さんは日中双方の軍事力を比べ、楽観視している。
「海上自衛隊は対潜哨戒機P3Cを90機以上持っています。日本海近海でウロウロできる中国の潜水艦はありません。しかも、駆逐艦の数はアメリカの第7艦隊より多いのです。局地戦なら負けない戦力の違いがあります」
安倍総理は会見で「国民の命を守り、平和な暮らしを守るため」と限定的な行使容認だと説明していた。だが1週間後、オーストラリア国会で「アメリカ とも力を合わせ、一緒にやれることがたくさんある。なるべくたくさんのことを諸外国と共同してできるようにしていきたい」と演説した。一度、認めればなし 崩し的に進んでしまうのではないか。止めることはできないのか。
「閣議決定は不変のものではない」と泥さんは指摘する。民主党政権が打ち出した2030年脱原発政策、北朝鮮への制裁などもひっくり返されている。
「集団的自衛権を覆す政権を我々の手で生み出すことです。その政権は、野党が作るのか、自民党内で集団的自衛権に慎重な勢力なのか。このままでは選 挙で負けるという危機感を自民党に与えることです。自分たちの主張を取り上げざるを得なくなるような動きを作り出すことだと思います。あきらめてはいけま せん」(了)
【矢野 宏 新聞うずみ火】
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