◆ 福島に過去のデータは通用しない
R:実際、科学的根拠があるという意見もあればないという意見もあります。まず正確な情報を得るということが一番必要ではないかなあと思うのですが。
小出:そうです。これまで蓄積されてきた被曝と被害の因果関係を証明するデータというのは、主要な部分は広島・ 長崎の原爆被爆者にありました。その被爆の仕方というのは、瞬間的に大量の放射能を外部から受けるというもので、そうした被曝の形式に対しての被害が、 データとして少しずつ蓄積されてきたのです。
しかし、今回の場合は、恐らくそういう、外部から全体的に被曝を受けたというものではなくて、鼻なら鼻の部分だけ局所的に被曝をしたという、かなり 特殊な被曝の仕方もありえたと私は思います。そういう事をきちんと検証しなければいけないはずなのですが、いわゆる科学の常識に従って、これまでのデータ だけで判断してしまうという誤りを多くの方が犯したと思います。
R:なるほど。過去の例にない被曝の仕方をされたのではないかということですね。
小出:はい、福島の事故なんていうのは、人類が初めて遭遇している事故なわけです。過去の経験では分からないよ うな被曝の仕方というのは、あるはずだと私は思います。科学というのは一歩一歩、事実と経験を蓄積していかないといけないものです。今、進行している福島 の事故、そして、その汚染からの被曝ということにもっと謙虚に向き合うべきだと思います。
R:ありとあらゆる可能性を想定しながら徹底的に調べることが大事ではないかと。
小出:それが科学的な態度だと思います。
R:けれども、その科学的な態度がなかなか実践されていないようです。
小出:政治家に科学的な態度を求めるというのも、おかしな話ではありますが、でも、政治家の人というのは、やは り人々を守るというのが一番の大切な役割だと思います。頭から、もう被曝と被害の因果関係がないというような発言をするというのは、まことに政治家として もおかしいと思います。