◆いくらかかるかわからない核廃棄物処理
R:今までの原発のコスト計算を見ておりますと、使用済み燃料棒などのいわゆる核廃棄物の処理費用がきちんと計上されていたのか、非常に大きな疑念を感じます。その辺はいかがでしょうか。
小出:おっしゃる通りです。原子力発電所というのは 仮に事故を起こさなかったとしても、運転をしてしまえば膨大な放射性物質、核のゴミを生み出してしまいます。そのゴミは、いつか科学が進歩すれば何とかな るのだろうと思いながら、ここまでやってきてしまったわけです。しかし、一向に手段が見えないままです。
R:小出さんが考えてもどうにもならないのですか。
小出:はい、もちろん自分たちが生み出したゴミですから、無毒化したいとみんな思ってきました。いずれなんとかなるだろうと研究をすでに70年続けているのですが、無毒化できないというのが現在の状況なのです。
仕方がないので地面に埋め捨てにしてしまおうというのが、日本の法律ですでに決められてしまっています。けれども、埋め捨てにして一体何年間きちん とその場所に留めておけばいいかというと、10万年とか100万年という時間の長さなのです。そんなもの科学が保証できる道理がありません。
2012年9月に、日本の学者の国会とも言われている日本学術会議も、ようやくにして、今まで原子力を進めてきた人たちがやろうとしている方策、つ まり地面に埋めてしまうというようなことは、一から見直せと答申を出しました。これから本当にどうやってできるのか、それすらも分かりません。本当にきち んとやろうとすれば、それも一体いくらお金がかかってしまうか分からないというものなのです。
◆電力の安定供給にも寄与しない
R:原発を推進する方のお題目のような言葉があります。「電力の安定供給に原発は欠かせない」。けれど原発事故以降、ほとんど原発が動いていない中で、電力は現在足りているわけですよね。
小出:そうです。みなさんは「原子力発電を止めてしまうと停電する」と聞かされて、それを信用してこられたようなのですけれども、実はそんなことは全然ないのです。
日本には火力発電所と水力発電所が膨大にありまして、それをきちんと動かすように準備さえしておけば、真夏の一番電気を使う日でも足りてしまうとい う状態がずっと続いてきたのです。福島第一原子力発電所の事故の後、例えば今だって、日本では原子力発電所は1基も動いていないわけですけれども、電力不 足にはなっていません。2014年の夏だって十分いけると電力会社や国の方が言っているわけです。
原子力なんて即刻足を洗っても困らないということを 皆さんにはちゃんと知っておいてほしいと思います。
原子力が安定電源などというのは、むしろそれこそが間違えているわけです。1カ所の原子力発電所で事故が起きれば、全部を停止しなければいけなくなってしまう。それほど不安定な電源だということが、今回はっきりと分かりました。
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