金日成-金正日神格化の一環 狙いは金正恩世襲の正当化
それまで金日成氏のものだけだった屋外掲示の肖像画が、金正日氏のものと二人セットに掛け替えられていることが、アジアプレスの北朝鮮内部での取材で分かった。映像や証言で確認できる限り、もはや金日成単独の肖像画は存在しないようだ。(ペク・チャンリョン)
北朝鮮では2011年末の金正恩体制発足以降、金日成氏と金正日氏の偶像化が強まっている。金父子の永生を願う「永生搭」と呼ばれる石造のモニュメントや、金父子の遺影である「太陽像」を描いた肖像画が次々と建てられている。
すでに世を去った金父子に対する崇拝強化の目的は、金正恩氏の権力世襲の正当化だろう。金正恩政権は昨年、憲法や労働党規約を超える最高の行動規範 である「十大原則」を39年ぶりに改定した(旧「党の唯一思想体系確立のための十大原則」→新「党の唯一的領導体系確立のための十大原則」 写真 )。
新「十大原則」では、この世にいない金日成氏と金正日氏を、いわば「二人の神」として同列に絶対化し、二人の神の思想に基づいて俗世の政治を執行す るのは唯一「党」だけだとしている。この「党」が金正恩氏を指すのは間違いない。さらに、「わが党と革命の命脈を白頭の血統(編注:金氏一族)で永遠に保 ち」と明記され、金正恩氏による世襲後継の正当性を強く打ち出している。
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