果敢に告発するネットメディア「人民監督網」
中国で相次いで暴露される官僚らのふしだらな写真や映像。それらが腐敗摘発の端緒となることも多い。仕掛け人とも言える人物は、取材に対して「(摘発は)当然の結果」と話し、不正追及の手を緩めていない。3回シリーズで伝える中国官僚組織の腐敗の実態。(アイアジア/宮崎紀秀)
●人民監督網
雷元書記の転落のきっかけとなった動画はどのように投稿されたのか。
去年(2013年)10月、私は、北京市内のあるマンションを尋ねた。そこを自宅兼職場にしている朱瑞峰さん(42歳 年齢は取材当時。以下同じ)は、官 僚の不正を暴くインターネットメディア「人民監督網」の主宰者。彼こそが、雷元書記のビデオを暴いた人物だ。
2006年に「人民監督網」を立ち上げ、これ までに80人以上の官僚の腐敗や不正を暴いて来たという。紺のスーツとネクタイ姿で、情熱的に話しながらも柔和な笑みを絶やさない朱さんは、百戦錬磨の ジャーナリストというよりは、むしろ誠実なセールスマンといった印象だ。
12畳はあろうかという書斎が、朱さんの城だ。窓を背にどっしりとしたデスクがL時型に配置され、その上には電話やファックス、そしてインターネッ ト上で腐敗を暴く朱さんらしく、ラップトップコンピューター以外にデスクトップコンピューター用の液晶モニター2つが載っていた。
壁際の本棚には、案件ごとに資料を入れたボックスが整然と並んでいて、彼の几帳面な性格を物語っている。もう一方の壁には中国全土の地図。朱さんは 「中国のマックレイカー」などと称され、欧米メディアの取材も度々受けている。マックレイカーとは、「泥を掻き出す者」といような意味で、米国では調査報 道でスキャンダルを暴くジャーナリストに与えられる称号だ。
彼の暴露がきっかけで雷元書記の腐敗摘発につながったことについて聞くと朱さんはこう答えた。
「当然の結果です。私たちは記者として事実を報道するだけです。紀律検査委員会や政府が処分するかどうかは、彼らが決めることです」
中国では、当局に都合の悪いことを報じるには危険を伴う。実際に朱さんも、脅迫や暴力を受けたことがあるという。自宅の玄関には監視カメラを設置、 盗聴を避けるために複数の携帯電話を使い、当局の封鎖を逃れるために「人民監督網」のIPアドレスは絶えず変更しているという。
「インターネットは中国で党と政府がコントロールしきれない空間。だからインターネットを通じて事実と真相を報じることができます。人々に報道の自由、言論の自由を与えることができます」
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