●電話に出た党幹部
張さんは、妻と鄭書記との不倫をネット上で暴露。これを受けて調査をした内江市の紀律検査委員会は、鄭書記と張さんの妻との不適切な関係を認め、鄭書記に対し職務解任と党内観察2年という処分を下した。
私は張さんの訴えを確かめるため、鎮政府を訪ねてみた。すると確かに事務所の一室には張さんの妻のネームプレートがあった。職員によれば、妻はもう出勤していないという。
張さんが残していた鄭元書記の携帯電話に電話をかけてみた。すると鄭元書記本人が電話に出た。北京からきたジャーナリストだと伝えると、息を飲むのが電話口に分かった。一瞬の間の後、鄭元書記は「紀律検査委員会に聞いて」とだけ言い、電話を切ってしまった。
妻と子供を奪われた形になった張さんは、紀律検査委員会の処分が軽すぎると怒りの声を上げる。
「いったい何を観察するというのか。人の家庭を壊しても、党内の観察処分だけで済むのだと、わざわざ世間に知らせるためなのか」
共産党員や公務員の力がどれほどのものなのか。私は、その手がかりとなる証言を得るため、中国東北地方、黒竜江省に飛んだ。
取材に応じてくれた孫暁晶さん(37歳)は、黒竜江省の共産党委員会秘書室の王弟白副室長と愛人関係にあったという女性だ。去年6月には、2人の間 に女の子が生まれた。家を訪れると、男性もののパジャマや下着が残されていた。王副室長のものだという。プレゼントされたというアクセサリー類も見せてく れた。中でも一番高価なものは、日本円で約10万円したという指輪。2人はよく高級レストランにも行っていたという。
「毎回食事が高いから家で食べようといったら、『食事カード』があるから大丈夫、力を出して問題を解決してやるとその会社の社長がカードをくれるのだ、と言っていました」
食事カードとは、レストランで使えるプリペイドカードや食事券のようなもの。高額なものは数万円分になる。副室長が口利きの謝礼として受け取っていたということだろうか。
孫さんは、王副室長のもとに利権を求める人が度々訪れていたことを、次のように証言する
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