これじゃまるでニューヨークじゃないか、と思った。
スプレーを使ったポップな落書きを見つけたからだ。そこは北京の古い街並が残っている地域。灰色のレンガが積まれた昔ながら家や壁の風情が、北京ら しさを求める観光客を惹き付けて来た。利に聡い人たちの目に止まったのだろう。古い食堂や民家は改修され、カフェやショップに生まれ変わっていく。
用を足すには公衆便所、冬はとてつもなく寒い。ちょっと不潔で不便だった超ドメティックの地域に、私のようなよそ者にも心地良い空間が拡大しつつある。それはありがたいのだが、同時にそうした変化がこの土地で生まれ育った人たちの生息地を狭めているようにも思えるのだ。
もはや市場経済に支配された中国、それが自然の流れかもしれないが。