イラク 中東地域 戦争の現場から 【連載・写真特集】イラクのヤズディ教徒たち 【連載・写真特集】【第1部】イラクのヤズディ教徒たち(1)◆受け継がれてきたヤズディ教(ヤジディ教)の共同体 2014.09.01 玉本英子 ヤズディ教は、ヤズド教、エズディ教とも表記される。(アラビア語ではイェズィーディー、クルド語本来の発音ではヤズディ、またはエズディ) ゾロアスター教やイスラム教、キリスト教、ミトラ教などの影響も見られる。信仰の対象は神であるが、七大天使とする神の使徒を崇め、なかでももっとも重要なのが神が最初に創ったとされる孔雀天使タウス・マレク(まはたマラク・タウース)である。孔雀天使は神が創ったアダムを否定し、神に叛いたともされる。この孔雀天使はイスラム教徒からシェイタン(悪魔)と呼ばれ、「悪魔崇拝」「邪教」とみなす者が少なくなかった。写真は信仰の対象の孔雀を描いた絵。ヤズディの聖地を巡礼する女性たち。(シェハン・2005年)韓国軍部隊がイラク・アルビルに駐留していた当時、地元の交流会に招待されたヤズディの伝統衣装の青年たちと韓国兵の記念写真。珍しい光景。韓国兵のなかには、イラクにはクルド人やキリスト教徒がいることを知っているものはいたが、ヤズディ教徒のことは知らなかった。日本でも当時はヤズディの存在が報じられることはなかった。(アルビル・2005年)ヤズディ教徒が最も多いのがイラク北部のニナワ県とその近郊地域。このほか小さなヤズディの村も点在する。シリアやトルコ、アルメニアなどにもまたがって暮らし、全体で60万人前後といわれ、イラクだけで数十万がいるとされる。旧フセイン政権時代に難民としてヨーロッパに逃れたヤズディ教徒も多い。とりわけドイツには数万人が暮らす。イラクの2大コミュニティーはシンジャルと、聖地ラリシュのあるシェハンだ。シンジャルは土漠地帯に広がる岩山を取り囲むようにヤズディの町や村があったが、今年8月、「イスラム国」によって制圧されたことで消滅する危機にさらされている。モスル東にあるバシカは、ヤズディ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒が混住する町だが、一部にイスラム国が侵攻し、クルディスタン地域に避難する住民があいついでいる。次へ >>> 第2回「ヤズディ教の風習」>> ◆第1部「ヤズディ(ヤジディ)の習俗、文化、迫害の歴史」(1~7)一覧 ◆第2部「イスラム国侵攻後のヤズディ居住地現地取材と女性拉致被害」(1~7) 一覧 1 2 Facebook postはてブLINEPocketFeedly