拉致したヤズディ教徒女性を戦闘員に「奴隷」として分配
イラク北西部、ヤズディ(ヤジディ)教徒の町シンジャルを制圧したイスラム国は、住民の殺戮と迫害を開始した。イスラム過激派から 「邪教」とされてきたヤズディ教は銃をつきつけられ、イスラム教への改宗を迫られる。さらに数百人を超えるヤズディ教徒の女性を集団拉致。戦闘員と強制結 婚させられたり、「奴隷」として売られたりしたという。その多くは今も行方不明のままだ。このひと月間に女性たちの身に何が起こったのか。イスラム国に拉 致され、脱出してきたばかりの女性は声を震わせながら語った。(イラク北部ザホー・玉本英子)
◆イスラムへの改宗と性行為の強要
シンジャル近郊の村でイスラム国に拘束されたマハヤさん(30)とブシュラさん(24)姉妹は子どもたちと共に、支配地域のシリアに連れて行かれ、 1週間後、再びイラクへと移送された。モスルのイスラム国の部隊に譲り渡されたという。そこの戦闘員は、ほとんどが若いイラク人だった。イスラム寺院に入 れられ、「イスラム教徒になれ、祈らないと殺す」と電気のケーブルで何度も殴りつけられた。
「何をされるのか、いつ殺されるのか。体の震えが止まらなかった。女性たちはずっと泣いていた」と話す。
持ち物すべてを差し出すように言われ取り上げられた。だが、携帯電話だけは服に隠した。
その後、モスル近郊の村に送られ、兵舎として使われていた学校の校舎の教室に監禁された。そこにはすでに多くの女性たちがいて、10人単位に分けられた。
妹のブシュラさんは戦闘員の性の相手をするよう命じられた。拒否すると、戦闘員は怒って顔を殴りつけ、脇に抱えていた1歳半の息子を取り上げて連れ て行った。4日後に息子を返してくれたが、すでに衰弱し、その後、息を引き取った。姉マハヤさんの14歳の長女も戦闘員に連れて行かれた。絶望の中、女性 たちのいく人かがイスラム教への改宗を受け入れたという。
「私たちの人生はここで終わったのだと思いました。みんな陵辱されて、ここで死ぬんだろうと・・・」
わずか1か月の間に強いられた過酷な状況を、マハヤさんはまるで魂が抜き取られたかのように、淡々と話し続けた。だが、ブシュラさんは衰弱死した幼い息子の話になると、一気に泣き崩れた。
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