◆コバニと呼ばれるクルドの町
アイン・アル・アラブは周辺地域を含めても人口7~8万ほどの小さな町だ。住民のほとんどはクルド人で、他にアラブ人、トルコ系住民、アルメニア人などが 暮らしてきた。当初は、内戦の影響が他の町より深刻でなかったため地方から避難民が流入し一時、人口は倍近くに増加した。ユーフラテス川が流れるこの一帯 はかつてアッシリア帝国が勢力圏を広げた地域でもある。地元民は、ここをコバニと呼ぶ。オスマン帝国時代に、ドイツの鉄道会社がベルリンとバグダッドを結 ぶ鉄路を敷設に来たことから、「カンパニー」の町と呼ばれ、以降、それがなまってコバニとなったとされる。
内戦でシリアが混乱に陥ると、国外脱出などで人口は大きく減少した。YPGが防衛隊を組織し、守りを固めてきたものの、周囲は昨年からイスラム国によって包囲され、住民はどこへも逃げられない状況が続いていた。
すぐ北に伸びるトルコとの国境線は、トルコ側の鉄条網が張り巡らされていて、容易に国境を越えることは出来ない。包囲下に置かれた町には、生活物資や医薬品などがほとんど届かず、退路を断たれたなかで孤立する状態だった。(つづく)
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