武装組織イスラム国の攻勢で包囲にさらされたアイン・アル・アラブ(コバニ)。周辺の20以上の村がすでにイスラム国に制圧されたと 伝えられ、数万の避難民が脱出、トルコに向けて逃れている。一方、トルコからは町の防衛のためにクルド人志願兵も駆けつける状況となっている。 【写真:玉本英子】
◆トルコのクルド人が防衛隊に志願も
イスラム国は、「支配を受け入れたものは手厚く保護する」と布告を出しているが、それを信じる住民はいない。今年、イラクのニナワ県地域を制圧したイスラ ム国はキリスト教徒を強制追放し、クルド系のヤズディ教徒(ヤジディ教徒)に改宗か死かを迫り、連行した若い女性を戦闘員との強制結婚や奴隷売買の対象と した。シリアでも、イスラム国の支配下にある地域で殺戮や敵対組織の処刑がおこなわれており、今回のコバニへの大攻勢が住民の大量脱出へとつながった。
イラクのクルディスタン地域政府と違い、シリアのクルド組織は外国からの支援もないなか、武器も資金も独自に調達している。ヨーロッパのクルド人コミュニティーでは大規模な支援キャンペーンも呼びかけられていて、国境を接するトルコからは防衛組織への志願者も駆けつけている。
人民防衛隊(YPG)は内戦でのクルド地域での戦いを革命闘争(クルド語でテコシナ・ショラシュ)と位置づけ、地域防衛戦を超えた、より大きなもの としてとらえている。軍事訓練だけでなく、住民扶助機関や女性解放組織を通じた政治集会も頻繁におこない、思想的結束を固めてきた。
さらにYPGとその母体組織、クルディスタン労働者党(PKK)を支持するクルド人にとって、この町は特別な場所である。トルコで収監中のオジャラン PKK議長の出身地はトルコ・ウルファで、国境をはさんで反対側にあるのがコバニだ。このため町の陥落は組織的敗北という象徴的な意味を持ち、絶対に譲れ ない地という認識が強い。また言語もあげられる。イラク・クルド勢力は同じクルド語でもソラニ方言が主要。一方、シリアのクルド人は、トルコと同じクルマ ンジ方言を話す。こうした言語的な近さもトルコから志願しようとする青年たちの意識に大きく影響している。
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