原子力利用の危険性について警鐘を鳴らし続ける京都大学原子炉実験所(大阪府熊取町)の良心的研究者「熊取6人衆」を招いた、新聞うずみ火連続講座 が8月2日、大阪市此花区のクレオ大阪西で始まった。初回は高速増殖炉「もんじゅ」研究の第一人者、小林圭二さんを講師に招き、最近の原子力政策について 語ってもらった。(矢野宏/新聞うずみ火)

原発の危険性について警鐘を鳴らす、京大原子炉実験所の研究者たち「熊取六人衆」の一人、小林圭二さん。新聞うずみ火の連続講座にて。(撮影 栗原佳子)
原発の危険性について警鐘を鳴らす、京大原子炉実験所の研究者たち「熊取六人衆」の一人、小林圭二さん。新聞うずみ火の連続講座にて。(撮影 栗原佳子)

◇新たな「神話」で再稼動急ぐ

凍土壁建設が滞り、汚染水対策が行き詰まっている現状にもかかわらず、国は原発の再稼働を急いでいる。原子力規制委員会が今年7月、九州電力川内原発の審査を終了し、再稼働に向けての「お墨付き」を与えた。

小林さんは、南九州は有数の火山地帯であり、川内原発の敷地内には火砕流の痕跡があることを紹介し、「原子力規制委員会は『原発の寿命の間、火山の 噴火は起きないから問題はない』と言いました。これは『第2の津波』ではないか。福島第一原発でも事故が起きるまで津波対策に取り組んできませんでした。 火山の噴火がもたらす原発災害でも同じことが繰り返されようとしています」と語った。

さらに、規制委についても重大な問題があると指摘する。

「財界や自民党は原発の再稼働に向けての審査が遅いとイラついています。安倍政権は、大幅な人事の入れ替えをやっている。2人の委員が変わるわけで すが、クビを切られる委員長代理の島崎邦彦氏は活断層について厳しい姿勢を取ってきた人です。代わりに田中知(さとる)氏が入りましたが、原子力学会の会 長をやった人で、原発推進の大御所です。これで、規制委員会は推進に傾いていきます」

安倍首相は「原子力規制委の新基準は世界一厳しい基準だ。それにパスした原発は世界一安全だ」と言っている。だが、それは「福島原発事故で吹っ飛んだ『安全神話』の新たな創出だ」と、小林さんは指摘する。

「安全神話は、できたときから人々を思考停止させ、それは専門家も例外ではありません。科学者でも、原発が安全だと言っているうちに、自分自身でもそれが本当のような気になってくるのです」

このほか、小林さんは炉心熔解に至る過去の事故について触れ、「福島第一のような沸騰水型よりも、むしろ川内原発や関西電力大飯原発のような加圧水 型の方が事故を起こしやすく、メルトダウンも早く起こる」とし、1979年に事故を起こしたアメリカのスリーマイル島原発も加圧水型で、福島第一と違いあ らゆる電源が正常であったにもかかわらず、大規模な炉心熔解事故を引き起こしたと指摘した。
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