キャンプシュワブ・ゲート前での抗議行動(2014年8月 栗原佳子撮影)

生命を育む宝の海をなぜ米国の軍事基地として差し出すのか。国は沖縄県名護市辺野古への新基地建設に着手、埋め立て工事に向けた海底ボーリング調査を力尽くで進めている。米軍普天間基地の「移設」先とされ揺れ続けた18年。辺野古の海に初めて杭が打ち込まれた。
9月7日に投開票された地元・名護市議会選挙では、新基地建設に反対する候補者が過半数を占め、「ノー」の民意をあらためて突きつけたばかり。県民の大多数が反対する中での強行は何をもたらすのか。3回に渡って辺野古ルポをお伝えする。(栗原佳子/新聞うずみ火)

◇沖縄戦を彷彿させる海

那覇から高速道路を経由して約1時間半。土砂降りの雨の中、辺野古漁港脇のテントに飛び込んだ。ヘリ基地反対協議会の座り込みテント。ようやく雨脚が収まると、浜に隣接する米軍キャンプシュワブの沿岸海域に、数珠のようなオレンジ色のフロート(浮き具)が広がっているのが見えてきた。
8月15日から2泊3日の日程で名護市の東海岸へ入った。前日14日から、埋め立てが計画される海域でのフロートやブイの設置がはじまっていた。立ち入り禁止区域を明らかにすることで、海上での抗議・反対行動を阻止したいのだ。

辺野古沖。小さな船を何隻もで追走する海保のゴムボート(2014年8月 栗原佳子撮影)

これに先立つ6月、日米両政府は、キャンプシュワブ沿岸部の常時立ち入り禁止区域を大幅に拡大している。侵入すれば逮捕も辞さないという強硬姿勢。そのうえでボーリング調査を秋までに終え、今年度中に本体の埋め立て工事に着手という前のめりの青写真を描く。11月には知事選がある。昨年末に埋め立てを承認し、三選を目指す仲井真知事に、新基地建設反対の翁長雄志那覇市長らが挑む予定だ。現職敗退の可能性も視野に、いまのうちに少しでも工事を進めておこうという腹だろう。
雨にけむった視界が徐々に開けてくるにつれ、見慣れた辺野古の海の「異変」に気づかされた。海上保安庁や沖縄防衛局のボートや小型船が、目視だけでも十数隻浮かんでいる。しかも、沖合には等間隔に大型の船が停泊していた。海保の巡視船が全国から16隻も集結しているのだ。
「あのときと同じ」
69年前、水平線を米艦船がぎっしりと黒く埋め尽くしたのを見たという沖縄戦体験者がこう言っていた。「終戦の日」の辺野古の海は、まるで「戦争前夜」の様相を呈していた。巡視船の中には20ミリ機関砲を備えたものもあるという。
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