辺野古沖。沖縄防衛局の船に抗議する牧志さん(2014年8月 栗原佳子撮影)
辺野古沖。沖縄防衛局の船に抗議する牧志さん(2014年8月 栗原佳子撮影)

 

◇サンゴの海で傍若無人

私たちを追尾してきたボートは、埋め立て予定海域をだいぶ離れたところで、ようやくスピードを緩めた。
牧志さんがエンジンを止める。小休止。穏やかな波。たゆたう小船から眺める海は太陽の光を反射してキラめき、うっとりするような美しさだ。豊かな恵みを育 む海。あちこちに停泊している海保や沖縄防衛局の船だが、もしこれが釣り船だったらどんなにいいだろうか......。などと想像をめぐらしていると、牧 志さんが再びエンジンを作動させた。大浦湾入口に停泊した沖縄防衛局の船目掛け、一目散に飛ばしていく。甲板の男性が身構え、すかさずビデオカメラをこち ら側に向けた。

牧志さんがメガホンで抗議する。

「アンカー(碇)を下ろしたでしょう? ここはユビエダハマサンゴの群落があるんだぞ。早くこの海域を出て行きなさい!」

牧志さんは10年前から海に潜り、その豊かさを写真で伝えてきた。どこにどんなサンゴや魚たちがいるか知り尽くしている。防衛局の船が漫然とアン カーを下ろした瞬間、何が起きたか、海の中の様子が手に取るようにわかったのだろう。埋め立てが予定されるのは生物多様性の豊かな海域で、絶滅危惧種の ジュゴンも生息している。厳正な保護をはかる区域として、沖縄県自身、ランク1と評価しているのだ。(つづく)
【栗原佳子】
<辺野古ルポ>新基地着工 生命の海に杭打つ国(上)
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