◇ここに来てほしい
恩納村の池原澄江さん(60)は娘の寿里さん(26)と土日以外の5日間通っている。寿里さんは2年前、基地問題のドキュメンタリー映画を見たのを きっかけに、高江のヘリパッド問題や辺野古に関心を持つようになったという。「この異常な状況を将来に残したくない」と寿里さん。母親の澄江さんは「政府 はなぜ沖縄をいじめるのでしょうか。すぐにでも工事をやめてほしい。この海を壊したくない」と言う。澄江さんはたくさんの人にここへ来てほしいと願ってい る。「誰が善で誰が悪なのかわかる」と思うからだ。
池原さん母子は2年前、オスプレイ強行配備に反対し、普天間基地のゲート封鎖行動にも加わった。その普天間基地の真横に暮らす赤嶺和伸さん(60)も強行 配備がきっかけで普天間のゲート前に立ち、反対の意思を示すようになった。いまは辺野古にも通う。 政府は「普天間の危険性除去」のため辺野古「移設」が 必要だとする。赤嶺さんも爆音に苦しめられているが、「宜野湾市民の一人として辺野古に基地を押し付けることはできない」という。近いうちに、宜野湾の中 学生たちをこの場に連れてくるつもりだ。
◇10年間平和の灯掲げ
16日は土曜日だった。夕方までの抗議行動が終わり、テントも撤収された薄暮のキャンプシュワブゲート前で、恒例の「ピースキャンドル」が行なわれ ていた。大浦湾沿いの瀬嵩に住む渡具知武清さん(57)一家が中心になり、毎週ろうそくを手に、行き交う車に手を振り続ける。「辺野古の海を守りましょ う」と。
渡具知さんは測量業を営んでいる。建設業者には賛成派も多く、反対の声をあげることは仕事で不利益を被ることも意味したが、子どもたちに静かで平和 な環境を残したい一心で18年間踏ん張ってきた。この18年間に授かった子どもたち3人も成長し、キャンドルを持ち、毎週一緒にここに立つ。
ピースキャンドルは2004年にはじめた。国が辺野古を断念すれば終わる取り組みだった。それがもう10年になる。「まさかこんなことになるとは」と嘆きつつ、渡具知さんは「あきらめるわけにはいかないね」と表情を引き締めた。
「新基地建設ノー」の県民世論はこれからさらに高まるだろう。9月7日に行われた名護市議選では、新基地反対の稲嶺市長を支持する議員が過半数を維 持した。県知事選の前哨戦とも位置付けられた注目の選挙。しかし、基地負担軽減相を兼ねる菅官房長官は翌日の会見で「辺野古移設については淡々と進めてい きたい」と、民意を踏みにじる発言に終始した。さらに、新基地建設に反対する翁長那覇市長が市議会本会議で知事選への出馬を正式に表明した10日には、 「昨年暮れに仲井真知事が埋め立てを承認し、工事は粛々と進んでいる。この問題はもう過去の問題」と突き放したという。作業が着実に進んでいるという既成 事実を積み上げ、抵抗しても無駄だとあきらめさせようというのだろうか。県民はそんなさもしい魂胆を、とっくに見抜いている。(おわり)
【栗原佳子】