◆女性はどういう状況におかれていますか?
ヘンミ記者:イスラム国は、自分たちの決めたイスラム原理に従わない女性には罰を加えています。たとえば石打ち による死刑です。不貞行為だと咎められて石打ち刑に処せられるなどしています。処刑だけでなく、ヘジャブをかぶっていないことも処罰の対象とされます。ヘ ジャブを被らないからといって、暴力的に罰するなどということが受け入れられるものではありません。彼らはイスラムの教えを自分たちで勝手に解釈してそれ を法律にし、処罰まで下す。こんな状況では、女性たちは声を潜めて生きるしかありません。
◆ラッカ市内でイスラム国の支配に反対する動きはあるのでしょうか?
ヘンミ記者:当初は、過激勢力に反対する声もありましたし、ひそかに活動する人もいました。しかしイスラム国は 反抗的な住民をあいついで拘束しました。恐怖支配から逃れて別の場所やシリア国外に脱出した人もたくさんいます。ただ移動も容易ではありません。彼らはス パイの侵入を疑って常に住民の動きに目を光らせていますから、命がけで脱出しています。
ラッカには過激主義に批判的な知識人や作家がいましたが、イスラム国に追われ、国外に脱出したり、ラッカで拘束され、投獄されるなどしています。女 性も含まれています。私の知人もひそかに活動していましたが、身の危険が迫り、脱出しました。一部の町では、ひそかにイスラム国に対して武器をとって戦お うとする人もいますが、現状では勝ち目はないでしょう。
◆一般のイスラム教徒は、イスラム国のやりかたをどう思っているのでしょうか?
ヘンミ記者:私も含めてシリアのほとんどの人びとはイスラム教徒です。そしてスンニ派が多数を占めています。法 を犯した者は法に従って罰せられることはあるでしょう。しかし、私たちはムスリムとして、あんな公開処刑や殺戮行為を受け入れてはいません。イスラムの正 しい教えに反するものです。人間を斬首するなんて、アラブ人でも、クルド人でも受け入れるわけがありません。人間の知性に大きく叛くものです。でも過激主 義者の暴力を前に、普通の人びとはどうすることもできないのです。まさか自分の国でこんなことが毎日のように起きるなんて、誰が想像したでしょうか。(つ づく)