◆サンゴ礁の海を埋め立て、最新鋭の巨大な基地を
日本を戦争のできる国に変えようと目論む安倍晋三政権が、沖縄のサンゴ礁の海を埋め立てて新しい米軍基地をつくろうとしています。
安倍政権は今年2014年8月18日から、沖縄県名護市の太平洋側、東海岸の辺野古で、米軍普天間飛行場の移設に向けた海底ボーリング調査をおこなっています。
そこは、米海兵隊基地キャンプ・シュワブのある辺野古沿岸から大浦湾にかけての海域で、貴重なアオサンゴやハマサンゴの群集に魚が群れ、豊かな海草藻場〔うみくさもば〕にはジュゴンやウミガメが寄ってきます。
岩礁では渡り鳥のアジサシが繁殖し、干潟にはミナミコメツキガニやトカゲハゼなどが湧いて出ます。
生物多様性に富んだ「宝の海」とも、人びとの暮らしに恵みをもたらす「命の海」とも呼ばれてきました。
そのような海を埋め立て、V字型の全長1800メートルの滑走路2本、垂直離着陸輸送機オスプレイと装甲車と兵員などを運ぶ4万トン級の強襲揚陸艦も接岸可能な岸壁、ヘリパッド、弾薬搭載施設などを持つ、最新鋭の巨大な基地を造ろうとするのが、日米両政府の計画なのです。
◆新基地反対の民意を無視する政府の強硬路線
この新基地建設計画に対して沖縄では長年にわたって反対の声が根強くひろがってきました。
たとえば2012年5月の『琉球新報』と『毎日新聞』の合同世論調査で、普天間基地の移設問題について沖縄県内では、「国外移設」39パーセント、 「県外移設」29パーセント、「移設せずに撤去」21パーセントと、県内移設反対の意見がほぼ9割で圧倒的多数を占めました。「辺野古への計画通りの移 設」はわずか11パーセントでした。
今年2014年8月の『琉球新報』と沖縄テレビの合同県民世論調査でも、「移設作業は中止すべきだ」が80・2%に達しています。
地元の名護市では、2014年1月19日の市長選で、「陸にも海にも基地はつくらせない」と新基地反対を掲げる稲嶺進市長が再選されました。
沖縄県議会も同年9月3日に新基地建設中止を求める意見書を可決しました。
同年9月7日の名護市議選でも、移設反対の稲嶺市長派が過半数を占めました。
このように沖縄の大多数の民意は新基地建設に反対なのです。
ところが安倍政権は、仲井真弘多知事が2013年12月17日に埋め立て承認をしたことを全面に押し立て、沖縄の民意を無視して強硬路線を貫いています。
筆者が辺野古へ取材に訪れた2014年9月3日と4日も、翡翠色のサンゴ礁の海に4本の鉄柱を食い込ませた櫓状のスパット台船(鉄柱で作業台を支 え、掘削地点に応じて移動)が2基、ボーリング調査をしていました。作業台の中心から掘削用の黒いパイプが海に突き刺さっていました。
「海を壊すな!」
「ボーリング調査やめて!」
口々に叫ぶのは、県内外から来てカヌーやモーターボートに乗り、新基地反対の抗議活動をする市民たちです。
しかし、海面に張りめぐらされた警戒区域の浮具〔フロート〕に近づくと、ヘルメットにウェットスーツ姿の海上保安官らを乗せた黒いゴムボートが全速力で白波を立てて集まり、ゆくてを阻みます。拡声器で立ち入り禁止を警告し、退去を迫るのです。